アンニュイだからって狂ったわけじゃないよ

やっと晴れた。久方ぶりに日輪を拝んだ気がする。青空も。
天気図を見ると、前線はまだ日本列島を真っ二つにしている。南から迫っていた台風は、こんもり崩れて丸くて白いモンブランケーキのようだ。
雲の見た目は甘そうな何かみたいだ。綿菓子、メレンゲ、生クリーム。適度に弾力がありそうで触るとベタベタしそうなのに、実際はまったく違う。
ヒトはどちらかというと、視力が発達した動物だ。例えば犬は色を判別できないし視力で言えば0.3ぐらいしか見えない。でも耳と鼻をレーダーにして、ヒトよりずっと速いスピードで走り回る。
ヒトが外の世界を認識するとき、他の感覚と比べて視覚からの情報がデータの多くを担う。そういうことから考えても、初対面の他人と相対したときに、まず見た目で相手を判断しようとするパターンは、必ずあると思う。相手がヒトの場合、蜂のように黄色に反応するわけじゃないし、汗のにおいから精神状態を嗅ぎ分けてはくれない。何をおいてもまず見た目なのだ。
だからヒトはパフォーマンスをする。いやもちろん他の動物もディスプレイはするが、嗅覚を使ったものが多い。
視力の良い鳥は見た目で求愛をする。美しい羽で飾り、広げて震わせてみせたり、ダンスを踊ったり。鳥とヒトは進化の過程では随分前に分化したはずなのに、とてもよく似ている部分がある。鳥はつがいを作る。鳥は浮気する。踊る。歌う。
何故だろう。個々は判りあえないけど、何かを伝えようとするのは。