怪獣リフジーン

ウチの社長は忙しくなってくると、人外のものになる。切羽詰ると人間性の地金が出てくるのはよくある話だが、ヤツの地は理不尽怪獣なのだ。普段はヒトのような顔をしているが、実は未知の生物である。
朝から人の顔を見てダラダラ毒液をたらしていても、そういうイキモノなんだから仕方ない。刺激すると太い尻尾で攻撃してくるので、「大丈夫だよ〜怖くないよ〜」と宥めながら慎重に周りから網を被せる。毒液が身体にかかるとその部分がただれるので、注意が必要だ。隙を狙ってひょいと脇をくすぐると、コロリとひっくり返る。
そんな感じ。


社長もCADが使える。ヤツは描く内容を理解しているので、まっさらなところから描き始めるなら、そのスピードはCADオペの私でも敵わない。
でもいかんせん半端なの。
ちゃんと加工できるように下準備してるのに、それを無視してごちゃごちゃ弄って、ひとりでドツボに嵌っている。しかも私には彼が問題にしている問題は単なる勘違いで、まったく問題など発生していないように見える。見かねて教えようとすると「オラが悪いんじゃねぇ、こんな下絵を描いたオメーのせいだ」と言われる。とほほ。忙しくてピリピリするのも判るけど、そんなふうに無駄な手間をかけていたら、ますます時間がなくなるよ。
いいからちょっとかしてごらんなさい。コレでしょ、こうでしょ。
と実演してみせるも、社長の中では私はダメな下絵を描いたダメな奴ということなっているので言う事を聞かない。
ああそう、じゃあ勝手に徹夜でも何でもしなさい。
技術的なことは社長が一番よく判っていて、社長にしか描けない絵もある。それは事実だ。アンタはエライ。
だから早く人間になってくれ。そんで先月分の給料をくれ。