最終局面

今朝ほど、暴力事件が発生した。
前回目撃したような、眼鏡が吹っ飛ぶほどの拳を振り切った殴打ではなかったものの、しかし軽い平手打ちだろうがまたどんなに態度が悪かろうが、社員に手を上げる社長があっていいはずがない。


会社には四、五年勤めている先輩社員がいる。
事に区切りがついた*1のでぶっちゃけるが、彼女は会社にお金を貸していた。しかも消費者金融から自分の名前で借りて。金額は百万単位である。
何故そんなことをしてしまったのか、その頃は私はいなかったので詳しいことはよく判らない。会社の運転資金だったというけれど、純粋な必要経費だけでそんな金額になるとは考えにくいのではないかと私は思っている。
しかし事情はどうあれ、彼女は一度貸してしまったのが運の尽きで、それからズルズルと返済を引き延ばされ、限度額まで隙間ができるとまた無心を繰り返されるという、絵に描いたような”喰いものにされている”状態だった。なんども話し合い、その度に社長は払う払うと言って実行しない。その陰で車を買い替え、旅行をし、引越もし、無駄な買い物も女遊びも止めない。
私はこの話を聞いて初めのうち、彼らは社長と社員だけども男と女なのではないかと邪推した。だって、そうでなければ考えにくい状況だ。ところがどうやらそれは見当違いだったらしい。社長も変だが、彼女の方も極め付きのお人好しだった。詐欺の被害者と加害者のようなものだったのだ。
会社を辞め、このまま自分の姿が社長の目の前から消えたら、絶対に貸した金を返してもらえないだろう。そう思った彼女は厭でも我慢して会社にしがみついていた。そしてお金を貸している強みもあるから、気に入らないことがあれば社長にもガンガン苦言を呈した。だが社長は弱みに付け込まれると腹が立ち、カッとなって手を上げる。
いままではそれは陰の闘争だったのだが、お盆の話し合いでいろんなことが明るみに出、彼女への借金も衆目に晒された。もうこうなったら穏便に返してもらおうなんて無理だ。弁護士を立てたというなら、逆に好都合だ。強硬な態度でとにかく取り立てて、その後はさっさと辞めよう。結果は強制執行でも自己破産でもいい。決着をつけよう。
そんな一触即発の状況だったのだ。


最終的に社長が我慢しきれず手を上げ、彼女はそれを受けて今日で辞めると言い出し、即日解雇してやると社長が逆ギレ。
で、キミはどうするの?
と聞かれたので、
「私も辞めます♥」
と答えておいた。
というわけで、今月いっぱいで会社は規模縮小*2だ。思ったより早かったなぁ。

*1:といっても、返済はまだなされていない。

*2:借金を抱えているので、倒産すると担保にしてた親の財産やらなんやらが全部持っていかれてしまう。だからそれだけはできないと社長は言う。この期に及んで、往生際が悪い。