後日談

お待ちかねの前職後日談である。
今度の会社でまとめて年末調整やったげるから、前の会社から源泉徴収票をもらっといてね、と言われたので例の社長に連絡してみた。まだ最後の給料をもらっていないからどうせ逃げる回るだろうなと予想はしていたので、本人と連絡がつかなくても別に驚かなかった。
でも源泉徴収票は欲しい。しょうがないので親切な税理士さんに直接電話した。
話を聞くと、社長はどうも夜逃げしたらしい。
税理士さんのところでも急に連絡がとれなくなったそうだ。その直前まで”これからはきちんとしますから、どうか見捨てないでください”というようなことを言っていたようなので、ちょっと解せない部分はあるのだが、踏ん張りきれなかったということかもしれない。
以後、とにかく電話には出ない、メールを送っても無しの礫。事務所のドアには”閉鎖しました”との張り紙。家賃を滞納していたはずだし、十月中に引っ越すようなことも言っていたが、そこら辺がどうなっているのかよく判らないらしい。
そして驚いたのが、社長に金を貸していた先輩(♀)とも連絡が取れないという。再就職先が判っていたので連絡してみたところ、”彼女を採用した事実はない”という返事だったそうだ。
‥‥‥なんですと?
じゃあ、何か。二人で逃げたってか。やっぱりあのふたりはそういう関係だったのか。そして先月、先輩からメールの返事が来なかった理由はそれか。
げに人とは判らないものである。
最後の方の先輩の不安神経症やストレスは嘘には見えなかった。私の目が曇っているだけかもしれないが。再就職にまつわる話も、私をもその職場に誘ったり、雇用保険の再就職手当について説明してくれたり、真っ赤な嘘にしては芸が細かすぎた。真実は藪の中だがある程度までは本当だったと思いたい。
だとしたら、初出勤の前に出奔したのか。何が彼女をそうさせたのだろう。つまりほだされたってやつか。
その前に、何かしらの事件じゃないだろうな。税理士さんにそう言ったら、”言わないで、私も考えたけどその心配はしたくない”と。うぅ。
社長のお友達である家具屋さん(この人も社長に金を貸している)も、仕事つながりで親切な税理士さんとやりとりがある。彼の話だとこうなる前の二人の住所を両方とも知っていたので家まで行ってみたが、どちらももぬけの空、かどうかは判らないがとにかく人の気配はなかったらしい。
この場合、警察に届けるべきなのか?
もうこうなったら最後の給料はどうでもいい。人の生命と秤にかけるような金額ではない。それに夜逃げを追うノウハウは私にはない。二年で時効だ。
ふたりともどうしているんだろう。意外としぶとく一緒に生きていそうだ、というのは希望的観測か。
どうか、無事でいて欲しい。


ちなみに源泉徴収票は税理士さんがなんとかすると言ってくれ、そのうえ何か判ったら連絡をくれるそうだ。そしてまた向うがそんな事情だったので私のこともずいぶん心配してくれていたが、さすがに私の連絡先までは知らなかったので連絡が来るのを待っていたという。本当に親切な税理士さんだ。