特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ −天才の実像」

東京国立博物館−レオナルド・ダ・ヴィンチ −天才の実像
腹も満足したところで上野のお山へ繰り出す。この日の目的はむしろこっちがメインだったので、やっと辿り着いた感じである。
結論からいうと、すっごく面白かった!!
イタリアから借りた絵は「受胎告知」のみである。照明を落とした特別展示室に入ると、一番奥にそこだけ明かりに照らされて大判の絵画がぽっと浮かび上がっている。すぐに目に入って、あっ、と思う。想像よりも色が鮮やかだな。
芸術の素晴らしさというのは私にはよく判らない。テレビ番組でこの絵は右手から斜めに眺めるように描かれているんじゃないかという予備知識を得ていたので、そのつもりで観ていくと、正面から見るとジョジョ手のようなマリアの右手がちょうど良い長さに見え、遠近法のバランスがビシッと決まってズイッと奥行きが錯視できる確信的な角度があるのが判る。これでもう夢中である。これはすごい。
人の頭の間から覗くように観たのだが、混んでいようがなんだろうがそんなのはどうでもよく、ひたすらガン見である。光源の加減のせいなのか、マリア様の頭の周囲だけがラメのようにキラキラ光って見える角度もあった。
その後は模型や動画を豊富に使った展示が続く。からくり好きには堪らない構成である。ぐったりとソファに座り込む同居人を完全に置き去りにして、わりわりと最前列に食い込み、口を半開きにして模型の周りを廻ったり下から覗き込んだりして、うへへへへ。たまらん。
こうして傍若無人に夢中になっていたのだが、近くにいたカップルの会話には少し注意を引かれた。
「これ、なあに?」
ケンタウルスだね」
「えっ‥‥昔はこういう生き物がいたの?」
「ええっ?」
「そ、そんなわけないよね〜‥‥あはは‥‥」
「えええっ?」
生き物の骨格や重心などから写実に拘った天才絵師の才能たるや、これ如何に。騙せてる、騙せてるよ!
そんなこんなで大変楽しい展示であった。
それにしてもあの模型群は凄いなぁ。レオナルド・ダ・ヴィンチといえば私にとっては絵よりも技術の人だし、実際の模型で見てみたいとずっと思っていたモノがズラリと並べられていたわけで、本当に興奮を禁じえず、涎が出そうだった。ダ・ヴィンチの面白いところの濃縮還元ジュースみたいなもんだ。あれ、常設してくれないかなぁ。