LIVE:トゥクトゥク・スキップ

日曜の晩、いつものように普通にパブへ行ったんである。いつものようにまずはゲストビールを飲み、いつものようにチップ&フィッシュをつつき、次の日は月曜だし早めに切り上げて帰るつもりだったんである。
そこへ外からささーっと楽器を携えた人たちが入ってきて、準備を始めた。
その店の一角が一段高く囲われていて低いステージになっているのは知っていた。普段はそこにもテーブルと椅子が置いてあり、客席になっているが、そういえばその日は譜面台とアンプが置いてあったんである。
正直、飲み屋で生バンドというのがあまり好きではない。いや、モータウンカフェとかブルーノートとか、最初からテンションを上げてそのつもりで行くのならいいのだ。しかし自分のペースでのんびり飲んで食べているときに、突然デカイ声で歌われるのはちょっとなー。それに飲み屋でやる音楽って、アレなことが多いし。好みもあるし。
しかしあいにくと坐っていた席はステージのまん前である。食事も済んでいない。これは逆に腹を決めて楽しんだほうが気分的にマシだろう。そう思ってまだ準備中のステージを眺めたんである。バイオリン、マンドリン*1、フルート、アコースティックギター、ベースはエレキで、あとパーカッション。少なくともギンギンではなさそうで一安心である。
しかし始まってみるとあにはからんや、明るい音色で懐かしいような安心感のある曲調ながらどこか底が抜けたような寂寥感を漂わせる、いわゆるヨーロッパの北のほうのストリートミュージック的な雰囲気である。ああ、これは嫌いじゃない。
というか、バイオリンで軽い音楽というのが、なにげに好きである。道端で太った肉屋のおっさんが弾いている感じ。パン屋のオヤジがコントラバスで、床屋はクラリネットというような。そんで民族音楽を演るのだ。楽しい。そういやバイオリンで島唄やってたのは誰だっけ?
聴いているうちに曲は終盤に差し掛かり、ダルセーニョアレグロ・ダルセーニョビバーチェ、そんで全員参加のオルタネーティブの和音がスタッカートでパンパンパンと決まるのが気持ちいい。フォーク系なのに思いのほかスリリングである。うはぁ、と聴き惚れてしまった。あまつさえ少し泣いた。こっそり涙は拭いたが。
先の気乗りのなさはどこへやらですっかり気に入ってしまい、予定の時間を過ぎて2ステージをノリノリで観て、さらにCDまで買ってしまった。自宅で聴いてみたが、やっぱりいい。なんだかピッタリくるんである。

↑ 一分過ぎくらいから曲調がアップテンポに変わる。
インストなのだがジャンルをなんといえばよいのか、彼らのホームページを見てみたら『フォークダンスPOPバンド』だそうである。フォークなんだかダンスなんだかポップなんだかよく判らない。
トゥクトゥク・スキップ(TUK TUK SKIP)ホームページ
ちなみにこのバンドのバイオリンは妖精さんが弾いているらしい。やっぱりなんだかよく判らない。
買ったCDのジャケはパーカッションの人がデザインしたんだそうだ。ヨーロッパっぽく影絵風でイケてるんである。写真を撮っておくのを忘れたので、あとで追加する。この人は四角いスピーカーのような打楽器に跨って叩いていた。ペルー発祥の楽器なんだそうな。カホンというらしい。

*1:琵琶みたいなイチジク型胴体の弦楽器。普通は8弦でピックを使って弾く。マンダリンはオレンジで、マンデリンはコーヒー豆である。