夏の憂い

社交辞令と判っているがあまり褒められると、ここは否定すればいいのか流せばいいのかどんな顔をしたら対外的に正しいのか判らなくなってくる。ひぃぃ、そんなおこがましいもんじゃありません、生まれてきてごめんなさいと無意味に謝ってまわりたい衝動をぐっとこらえ、えへへと笑って誤魔化す。心に冷や汗たら〜り。
それはともかく夏バテである。うむ是は見事な夏バテ! ポンと膝を叩きたくなるほど完全無欠に夏バテである。職場に異様に暑がりの人がいて、一日中おどけでない温度に設定された室内にいる。少なくとも1日8時間、多いときで13時間くらいかけてじわじわと冷却された身体は芯まで凍える。早い話が冷房病である。これが嵩じて休日でもカフェに座っていて熱いコーヒーを啜りつつ、冷房で腹が下ってトイレに駆け込む。カフェから出ると真夏の昼間の外気があったかくてきもちい〜とうっとりしてしまうようになる。加えて頭痛眩暈動悸食欲不振と諸症状がそろい踏み。
そもそも夏の身体は体温を保つのが楽なので、基礎代謝が落ちるようになっている。頑張って熱を稼がなくとも、むしろちょっと汗出して水冷すれば済む。そういうふうになっているのである。
冬は体温を保つために代謝は活発になるが、断熱材として脂肪を溜め込みたがる。デコボコしているより丸のほうが冷気と接する表面積が少なくて済み、更に体積が大きいほうが内部の温度は下がりにくいからだ。氷河期の生物や寒い地方の動物が巨大化する傾向にあるのは、そういう理由も考えられている。
生理現象として基礎代謝が下がる夏と脂肪を保ちたがる冬。結果は同じでも原因が違うのだ。
暑がりの人は夏でも代謝が落ちにくいのだろう。職場の暑がりさんも痩せた身体にランニングを引っ掛けてふぅふぅ言っている。対して太ってる人が暑がりなのは、全身を覆う脂肪は内から外への断熱効果もあるし、体積に対して表面積が少ないために排熱しにくいからだろう。ここでも結果は同じでも原因は違うんである。
しかしそんなことを考察していても夏バテは治らない。
冬に12Vのバッテリーが稼動しているなら、この時期の身体の能力は乾電池である。豆電球を点ける程度しか容量がないのに、電気ストーブを動かすことなどできない相談だ。かくして過冷却で体温を奪われると、補えないまま低体温に陥るんである。誇張してるがだいたいそんなストーリーだと思う。たぶんね。そうだといいな。
そんなわけで腹巻を買いに行きたいのだが、そういうときに限って仕事が忙しい。通販にするか。