駒ヶ根の旅2:駒ケ岳千畳敷カール

二日目、いよいよ駒ケ岳へ。千畳敷駅で標高2,611.5m、日本で最も高い場所で運転しているロープウェイに乗るのがこの旅行の目玉だったんである。
しかしこの駒ケ岳ロープウェイ、事前にネットで調べたら混むときは2時間待ちは当たり前、下手したら4〜5時間の待ち時間が出ることもあるらしい。そんな怪情報に戦々恐々としながらペンションの方にリサーチしたら、「ええ、混みます」と力強く断言された。そして「バスは朝5時から出てるから、できるだけ早めに出発したほうがいい」という。そして更にバスセンターで大勢並ぶから、そのひとつ手前の停留所で乗ると良いという知恵を授けてくださった。
説明しよう。甲斐駒ケ岳は麓の駒ヶ根高原から先は一般車立入り禁止である。そのため必ず専用のバスかタクシーに乗って、ロープウェイ乗り場のあるしらび平というところまで行くことになる。駒ヶ根高原にある菅の台バスセンターにはバス+ロープウェイのチケット売り場もある。
なんだかややこしいが、おそらく混雑時の臨時バスは菅の台から出るとかそのひとつ手前で出るとか、菅の台のちょっと先までは一般車も入れるとか、いろいろ細かい事情はあるが、基本的に駒ヶ根駅〜菅の台バスセンター〜しらび平は一時間に2本の路線バスとして通して運行されている。もちろん駅前から乗って菅の台をスルーしてしらび平まで直接行くことも出来る。路線バスなので当然途中の停留所でも乗り降り可能。そして料金は途中で降りなければ、駅前からなら1,000円、駒ヶ根高原あたりからなら片道800円になる。わざわざバスセンターでチケットを買わなくても、その場で現金で払えば無問題。ただし殺伐とした混み具合のためお釣を要求すると顰蹙をかうので、金額ピッタリ持っていったほうがいい。中央アルプス観光(株)のこのページを見ると判りやすい。
ちなみに我々はシステムがよく判らなかったので、前日の夕方に菅の台バスセンターに隣接している観光窓口へ行って「チケットを事前に買わないといけないの?」と訊いたら、窓口の人に「買っとかないと乗れない。今日はもう閉まっちゃったので、明日の朝4時半から開いてるからそこで買ってくれ」といけしゃあしゃあと言われた。なんかおかしいと思いペンションに帰ってそのことを伝えたら、話が一転して「そんなことはない」とのこと。どうも窓口の人はチケットを売りたくてそんなことを言ったらしい。なんだ、この油断のならない権謀術数は。ここはインドか。
とにかくバスは現金でもOK、ロープウェイの券はしらび平の乗り場で買ってもいいし、菅の台バスセンターでバス+ロープウェイのチケットを買っておいてもいい。どちらにせよ、ふたり以上いるなら誰かがチケットを買いに行っている間に、残りの人が並んでおけば尚良しである。


そんなこんなで我々は始発のバスに乗るべく、急遽早朝に出掛けることにしたのである。朝寝坊が身上で毎日遅刻寸前のこの私が、4時半起きである。アリエナイ。しかし遊びのためなら起きられる不思議。そしてこんなこっ早くから出掛ける我々に、ペンションの方は朝食代わりにおにぎりまで持たせてくれた。こういう観光地なので馴れてるとはいえ、有難いことである。更に手袋を持ってなかったので軍手まで貸してもらった。
この日の最低気温は山頂で2度。まだ氷点下じゃないだけマシらしい。冬物の上着は持って行ったのだが、まさに最低気温真っ只中の山に登ることになるとはこのときまで思っていなかったので、慌てて手持ちの服は寝巻き代わりのTシャツまで全部着込んで挑むことにしたのだった。

  • 朝、まだ真っ暗なうちにペンションを後にし、星を見上げながらバスを待つ。

  • バスは暗闇の山間部をひた走る。綴れ折りのヘアピンカーブを繰り返すうちに、だんだん夜が明けてきた。

  • しらび平では写真を取る暇もなく、チケットを買い列に並んですぐ、スムーズにロープウェイへ乗り込めた。早起きした甲斐があったというものである。しかし朝ぼらけのこの時点で既にロープウェイ内は満員のラッシュ状態である。宙に吊られて昇ること7分半、あっという間に千畳敷カールへ到着。
  • 駅から出てみるといきなりこんな光景。振り返ると、戻っていくロープウェイが昇ったばかりの朝日に照らされている。寒い。日陰にいると軽い拷問かというほど震えが止まらないくらい寒い。一方日なたへ出ると遮るものなく日光が到達するようで、嘘のように暖かい。太陽って偉大だなぁ、とここにいる間に5回くらい言った。

 

  • 辺りを見回すと、紅葉を見るより異様な雰囲気に圧倒される。ここ何処? 地球だよね?
  • 空気が澄みすぎて遠くのものも霞まない。そのため遠近が掴めないのでスケール感がおかしい。ずっと先まで行列が続いているのだが、視界はクリアなのにほとんど見えないほど小さいのだ。

 
 
 

  • 40分くらいで周遊できる遊歩道があるので、その道を辿る。両側にロープが張ってある道筋以外は立ち入り禁止である。
  • 透明な湧き水が流れていて、ここがまさしく源流である。それにしても恐ろしいほどきれいな水だ。
  • よく見るとしぶきの当たっている草が棒状の氷に封じ込められている。
  • 谷の底に夏季だけ現れる剣ヶ池も薄く凍っている。
  • そして3センチはあろうかという立派な霜柱。こんなの初めて見た。

  • そしてよく判らないが高山植物であろう皆さんと、日光浴中の小さなピカピカの甲虫。

  • 千畳敷カールのカールとは、氷河の侵食によって出来た広い椀状の谷(圏谷(けんこく))のことである。スプーンで抉ったような地形になるという。
  • この日は本当に天気が良くて、空が青いを通り越して群青色で宇宙まで見えそうだった。西の空には半月が浮いていた。
  • 反対側を見ると、朝日の下に南アルプスの山々が連なっている。エライ処に来ちゃったよ‥‥。
  • どうやら空気が薄かったらしく、山頂にいる間中ずっと妙にハイテンションで楽しくて、しかし思うように足が上がらず段差でよろけまくり、手指が痺れていた。これは予想外の寒さのせいだけではなかったと思う。


  • ほぼ待たずにすんなりロープウェイに乗れたので、朝6時には山頂へ着いた。2時間ほどウロウロしてもまだ8時半である。帰りのロープウェイもまだガラガラだった。
  • 降りのロープウェイの中から見えた紅葉と滝。滝つぼが碧い。どれほど切り立った山肌かお解かりいただけるだろうか。

 

まだつづく。