映画:ミックマック(監督:ジャン=ピエール・ジュネ)

観ながらニヤニヤしてしまう楽しい映画であった。この監督は『アメリ』しか観たことがないが、こっちのほうが本領発揮なのであれば、もっと他の作品もあさってみることにしよう。しかし関係ないのだが、ジャン=ピエール・ジュネといわれるとなんとなく印象派の画家のような気がしてならない。いやそれはエドゥアール・マネだから。クロード・モネでもないから。それか燦然たる耽美ノワール趣味とか。いやそれはジャン・ジュネ違いだから。
それはともかく素晴らしいのが、ナレーションによる説明がないことだ。私はアレがキライでな。だから邦画は地雷なのだ。逆にパントマイムやコントの類が好きなのだな。カールじいさんの序盤も素晴らしかったが、この映画も最初のいきさつからとことん映像で見せてくれたのが嬉しかった。
ライバル会社が道路を挟んで向かい同士に建っていたり頭蓋骨を切ってから脳に食い込んだ銃弾を取り出すのを止めてみたり、なんともいえない可笑しみがそこここに漂う。廃品利用でなにかやらかそうとして肝心なところでボロが出るのも、「あああ‥‥」と口をあけてだらしない笑いが漏れるほど、他人事とは思えない親近感を感じてしまった。カラフルながらトーンをおさえた色使いも美しい。
お話は復讐劇なのだが、仕返ししたいという内向的な気持ちがそれを実行するにあたってのアイディア出しと慣れない仕事をこなすドタバタとドキドキにすり替わっていくのが爽やかであった。最終的には相手の社会的立場をも追うことにはなるのだが、実質的なものよりもとにかくぎゃふんといわせることに重点を置いているのがよかったな。小細工を弄しできるだけ辛辣な方法で相手をバカにすること。気に入らない相手にお尻ペンペンするような罪のない単純な笑いである。