映画:エッセンシャルキリング(監督:イェジー・スコリモフスキー)


主演はヴィンセント・ギャロだが、台詞は一切ない。
砂漠で捕まったタリバン兵が移送途中で脱走し、雪深い山中を逃げ続ける話である。といってもドラマチックな展開は特になく、ひたすらあてもなく逃走するだけなのだが、目が離せない。
このタリバン兵は特殊訓練を受けた百戦錬磨の怪物などではなく、サバイバル能力に長けているわけでもない、人を殺すのは怖いけど仕方ない状況なのでやるというような極普通の一兵卒として淡々と描かれる。諸悪の根源タリバンも個人レベルではただの人とみるのか、こんな兵士を使うタリバンはやっぱり極悪非道だとみるのか。戦争というもののある側面をただ描いてみせただけかもしれない。見終わってなんとなく救いのない南極物語のようだなと思ったのだった。