外郭放水路 見学

かねてから見に行きたいと目論んでいた外郭放水路の見学に、ようやく行ってきたのである。正式名称は江戸川河川事務所の首都圏外郭放水路。大雨の際などに中小河川の洪水を地下に取り込み、地下50mを貫く総延長6.3kmのトンネルを通して江戸川に流す、世界最大級の洪水防止施設である。1回25名の見学会が1日に3回。平日しかやっていないので基本的に休みを取って行くしかないのだが、前回のチャンスは直前に震災が起きて潰れ、それからしばらく休暇もとれずにいたのだ。今回は夏休みでお盆休みのせいか予約開始と同時に予約サイトのサーバーに入れなくなり、10分程度で定員に達してしまうという争奪戦であった。

これが地上施設の建屋である。この地下に巨大なポンプが4機あり、上階は監視・操作室や展示場となっている。つまり大きなポンプ小屋なんである。

見た感じでポンプの電源設備なのだろうな。何故アーチ型をしているのか訊いてくるのを忘れた。巨大ポンプの動力は航空機のエンジンを改造して作られた1点もの(4点だけど)なんだそうな。あとで聞いたら、1分間で25mプールをいっぱいにできる水量なんだそうな。といってもピンとこないが、普通の学校のプールは水を張るのにだいたいひと晩かかると思えば、なんとなく普段扱っているものとどれくらい桁が違うのか実感できるようなできないような。

見学者のカードを首から提げて、まずは模型や航空写真などで施設の概要を教わる。この模型のつくりが凝っていて、ちゃんと水が流れたり説明の場所が光ったりする。

屋上に出て地形と位置関係を確認する。写真に写っているのが江戸川で、中央右側のぽつぽつと柱が立っている下側に放流口がある。手前の水色の円盤はトンネルを掘ったときのブレードである。いまは時計のオブジェになっている。

反対側のサッカー場の真下がお目当ての調圧水槽である。この日は遠くに富士の山頂が見えたが、この季節には珍しいんだそうな。サッカー場の奥にある白っぽいのが地下への入り口で、ここから約100段の階段を下りて巨大水槽を見学するのである。

階段を下りると、急に空気がひんやりする。地下はだいたい19℃。水槽内にもやがかかっているのは、外気との温度差で水槽内の水分が気化するからなんだそうな。

ひんやりじっとりした空気に、オレンジ色の照明でなんともいえない不思議な空間になっている。遠くから反響してくる低い音が不規則に聞こえる。国道16号の地下約50mにコンクリートで建設された地下トンネルということなので、だいぶ反響して聞こえるのだろうけども何の音なのかまったく見当がつかない。

5本あるうちの一番近い縦孔が見える。あの鉄骨階段を降りてみたいが、登りたくはない。これ以上近づいてくれるなというギリギリの場所から1枚。下のほうにボケて写っているのは、デジカメの台にした重機用車止めのコンクリートブロックである。雨水と一緒に土砂が流れ込むので、ときどき重機を入れて掃除するのだそうな。

それにしてもタラップはいい。いいね。
水害の水を一時的に溜めておくものなのかと思っていたら、ポンプでガンガン汲み上げて流す施設だったのだね。なるほどなるほど。それにしても治水というのは太古の昔から為政者の夢だが、現代になってもため息が出るほど大変なのだなぁ。


江戸川河川事務所 外郭放水路