富岳「風穴」

熊が突然「洞窟に行くぞ!」というので盆休み中に行ってきたのである。
目当ては富士五湖のうち河口湖と西湖の間のかの青木が原樹海にある天然洞窟である。なんでも洞内の気温は夏でも0〜3℃を保ち、染み出した水が氷の柱になるという氷穴は、江戸時代には将軍に献上する氷を切り出していたのだそうな。当時はおがくずを詰めた木箱に入れて籠で運んでいたので、ひと抱えもある氷は江戸に着くころには小さな塊になってしまっていたようだが。
高速バスで河口湖に向かうが、お盆の渋滞で2時間の予定が3時間かかった。更に路線バスを乗り継ぎ、氷穴に着いた頃には昼である。

雨の予報を裏切る青空。暑い。しかも氷穴の入り口には物凄い行列が出来ていた。チケット売り場で尋ねると、1時間20分待ちだという。「ダメだ、こりゃ」速攻で諦めるふたり。根性はない。
仕方ないのでもうひとつの洞窟である風穴を目指し、案内板に従って樹海の中を歩く。遊歩道を逸れて迷い込んだら二度と出られないという有名な富士の樹海である。地表は流れ出た溶岩が波打ったまま固まったのがよく判る。その上に苔が生し大木が生い茂っているという異様な森である。地面が岩だらけでそこかしこに穴が開きうねっているので、それを迂回しながら歩くしかない。なんとなく怖かったので写真は撮ってない。20分くらい歩いて風穴に辿り着いたときには、ちょっとほっとした。

ここは空いていてすぐに入れた。

階段を2〜3m下りると、急激に温度が下がる。この日の洞内の気温は0℃。「まるで冷凍庫に入ったような」という陳腐な言い回しがそのまんまである。

あっ、氷だ! 真夏なので溶けかけらしいが、天然氷の柱が立っている。大人ひとりぶんくらいの大きさだ。

内部は昔から天然の冷蔵庫として利用されていたらしく、蚕玉や植物の種などが貯蔵されていた様子が展示されている。

そんなに大きくもない洞内だが、これだけの気温差を体感できると満足度が大きい。氷穴には入れなかったけど、ここで天然氷柱が見られたからいいや、とあっさり納得する単純なふたりであった。
バスで河口湖駅に戻ると午後3時。他にもあれこれ計画を立てていたのだが、どこもかしこも渋滞ですっかり予定が狂ってしまった。お昼も売店の軽食をつまんだきりで悔しかったので、駅前のお店でほうとうを食べることにする。


大きな鉄鍋で出てきてたじろいだけど、野菜たっぷりのけんちん汁だったせいかするすると腹に収まる。壷に入った七味唐辛子もしっとりしていて薫り高く、しっかり完食したのだった。

駅前をぶらついていて見かけた、何故かブレーメンの音楽隊。
帰りの高速バスもご多分にもれず渋滞にはまり、2時間オーバーの4時間かかった。楽しかったけど、お盆に観光地へ遊びに行くもんじゃないと改めて学んだ1日であった。