『アルケミスト―夢を旅した少年』パウロ コエーリョ

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)

羊飼いの少年が夢のお告げに従ってお宝を探しに旅へ出るお話である。世界ベストセラー本トップ10に入る超有名本なのでいまさらここでどうのこうのいうのも口幅ったいが、いわゆる寓話でピースが嵌るとグッとくるけど、そうでもない人にはちょっと胡散臭い感じになるのかな。そこで私はというと、がっちり《ピースが嵌った》クチである。
主人公の少年は羊の群れを連れて風のように自由にあちこち歩いている。荷物の中には常に1冊の本があり、それを読み終わると市場に行ってまだ読んでいない本と交換する。あるときから不思議な夢を見るようになる。このへんからしてもう、個人的に子供の頃の憧れがみっちり詰まっているのだ。意思についての話、学ぶことについての話、必要なことと前兆について。そうそう、小学生くらいのとき、まさにそういう妄想ばかりしていた。夢見がちだけどもなにせ子供のことで、経験不足のせいかその先を思い浮かべることができず前に進めなかったものだが、まるでその続きを読んでいるようだ。
ずっと放置して忘れていた、埃だらけになった玩具のガラス玉を見つけたような気分になった。それはキラキラ光る宝物だったし、世間での価値など関係なくやっぱりいまでも大事なものだ。
目の前に手付かずの世界が広がっていた頃が確かにあった。そしてそれなりに年を経たいまでも嗜好はあまり変わってないようだ。