『オデュッセイア〈上・下〉』ホメロス

ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)

ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)

ホメロス オデュッセイア〈下〉 (岩波文庫)

ホメロス オデュッセイア〈下〉 (岩波文庫)

基礎教養である。とりあえずおさえるために読み始めたのだが、古典と謂うも愚かしい古めかしさなので読んで楽しいものかどうか正直不安だった。しかしまったく違和感なく面白く読めてしまったのだった。内容はいまでもよくあるようなファンタジー冒険譚なのよな。というか、いまでも量産されているファンタジーの系譜の始祖ということか。そう思うと凄まじくも恐ろしい。
なんといっても作者とされるホメロス自体が実在の人物かどうか判らないのである。実在の人物だとしたら、たぶん紀元前8世紀ころに生きてたんじゃないのといわれており、出自は女神カリオペの子だとか曖昧模糊として書かれた物語と区別がつかないことになっている。紀元前800年頃とは古代ギリシア人が地中海地方に植民地を建設し始めた頃だ。ロムルスによりローマが建国されたのが紀元前753年4月21日。その頃の日本はもちろん安定の狩猟採集生活中である。
中身も詩的であるだけでなく、ちょっと声を張るシーンでは「翼ある言葉をかけて言うには」なんて表現であったり、なんというか優雅でしかもこれが感覚的によく判るのだ。どこで泣いてどういうところで笑うかといった喜怒哀楽にも通じるものがあって、お隣の中国の古典を読むよりもむしろすんなり読めるかもしれない。やっぱり今の文明はギリシア・ローマの末裔なんだな、と妙なところで納得したのだった。