蓄積

秋とともに疲労も深まるシケた日々である。台風の吹き荒れた週末も漏れなく現場にいて、吹っ飛んだフェンスを拾いに行っては風に煽られたし、その前日には土砂降りの中で合羽を着て足場のメッシュシートを畳んでいた。上長にはなんで困ってるときに電話してこないの?! と突っ込まれたが、どこから助けを求めてよくてどこまで自分で処理すべきなのか、その境目からしてよく判らない。その場に自分しかおらずやるしかないからやっているわけで、出来るか出来ないかっつったらたいていのことは辛いだけで可能なんだよね。重量物を持ち上げるとか懸垂して足場の隙間から潜り込むとか、私の身体能力ではどうにも足りない事柄であればそれが不可能事で、そういう場面もままあるという意味では男女差が歴然とする職場である。しかし不惑も過ぎて肩だの腰だのが硬くなった年増がやる仕事ではないな。けっこう毎日「勘弁してくれよ」と思っている。
休みが取れたら何をしよう、と妄想するのが心の支えになっている今日この頃である。何がしたいって、ここ2ヶ月はヘルメット被って安全靴に作業服で真っ黒に日焼けしながら過ごしているわけで、もう自分のメンテナンス以外のことが頭に浮かばない。清潔な場所でのんびりしたいが掃除や洗濯はしたくない。観光旅行など自分の足でウロウロ歩いて疲れるなんて積極的なこともしたくない。計画を立てるとか監理するとか必要なものを手配するなんてもってのほかだ。丸太のように横たわっているうちに、プロにいいように転がされ手入れされたい。三度の食事も栄養バランスが考えられててプロの調理したものが勝手にプロデュースされて出てくるといいな。それも仕事関係の電話が入る心配のないところで。‥‥って、それは入院生活なんじゃないのか。そうか、倒れれば休めるな‥‥と不穏な考えがふと頭をよぎるのだった。