鑑定士と顔のない依頼人


イタリア映画である。平たくいうとおぼこい高齢童貞が初めて恋をした顛末という身も蓋もない話なのだが、イタリアの手にかかるとそれが世界的に有名な鑑定士、オートクチュール、隠し部屋、古い屋敷、覆面作家、アンティークのぜんまい人形等々、すべてが非常にスタイリッシュなのである。この話をよくぞここまで美しく仕上たものだと、その点はほとほと感心する。さすがヨーロッパのお家芸アメリカ映画ではこういうのは逆に鼻持ちならないものとして吹っ飛ばされるんだろうな。
やはり「愛とはなにか」についての物語なのだろうな。コペルニクス的転回を経てこその一歩踏み込んだ「それでも」という主張の強さ。ストーリーについては未見の方も居られるだろうし、これ以上あまり詳しくは語りたくない。観てのお楽しみである。私は非常に面白かった。