たまの休日

朝から立て続けに電話が2件入って起こされた。しょうことなしにコーヒーをポットいっぱいに淹れ、冷凍のパンをトースターレンジに放り込む。胡桃とレーズンのロールパンだが、これがなかなか美味いのである。この生活になってからは通販で買った食糧を冷凍庫にストックしていることが増えた。調理済みの麺類やパン、始めから凍ったままで届く弁当やパウチのスープ。時間の隙間ができたときに電子レンジで加熱すればいつでも短時間で1食摂れる。数年前ならすべてを焼き菓子型の栄養補助食品で賄っていたものだが、近頃はこうした簡易的な食材も飛躍的に品質が良く種類も豊富になってきて有難い限りである。こうなると新鮮な生の肉や野菜など、ましてやバランスよく配分調理してテーブルに並べるなど、休みの日にしか触れられない贅沢品だ。まるで未来に生きている。気まぐれにメニューを入力すると料理が出てくる箱型の機械ではないが、予め買ってさえおけば箱型の冷凍庫から箱型のレンジへ移動させて「自動あたため」のボタンを押すだけであつあつのご飯が出てくる。少々味気ないのは仕方ない。しかしいうほど不味くもない。
突貫工事の常で、現場の都合でたまたま予定が空いたらすかさず休みを取っておかねば次にいつ休めるか判らない。平日に突然休みを挟むので、電話の相手方はこちらが休みだとは判っていない。しかし多種多様な業者を相手にする仕事の性質上、1日休むくらいでいちいち説明するほうが面倒くさいのである。電話の合間に寝入ってまた電話で起こされる。起きたら保温ポットに残っている朝のコーヒーを啜る。現場に入っている間は休日はひたすら体力の回復に努めている。気晴らしに出掛けたり仕事以外の楽しみを求めるというのは、体力があるからできることなのだと痛感する。楽しみよりまずは生きるほうが先だ。できることといえば、久々に風呂を沸かしてゆっくり浸かるくらいがせいぜいなのだった。
こうなってくると、時間をかけてビールを傾けるのも贅沢な時間になってくる。酒を飲むにもショットでくいっとあおるほうが早くていい。シングルモルトを切らしていたので、残り物のバカルディで間に合わせる。そんなハードボイルドな日々である。