映画:マップ・トゥ・ザ・スターズ(監督:デビッド・クローネンバーグ)

観終わって最初の感想は「どろ〜ん‥‥」だった。以下、ネタバレ注意。

東洋医学を混ぜ込んだような怪しげなセラピーが変態である。畳に敷き布団で按摩しながら、中年男性セラピストが耳元で「もっとだ」と囁くのがキモチワルくて笑える。ねーよ。
オーディションで勝った側と負けた側がばったり出くわしたシーンで、昔日に母親が演じた役を今度は誰がやるのかというとアン・ハサウェイだという。それを聞いた瞬間にちょっと時が止まるんだよね。アン・ハサウェイといえば押すに押されぬアカデミー賞女優である。インチキセラピーを受けてもがいている脇役女優とは格が違う。つまり「死んだ母親=アカデミー女優」という図式が成り立つわけで、乗り越えられない壁が明示的にズドゥン!と立ち上がる瞬間である。ははは、残酷だ。
有名テレビ子役のベンジーが友人宅でラリって銃を弄ぶシーンがあるが、こういう場面では誰かが必ず撃たれねばならないわけで、観る側はさあ誰が死ぬのかと思いながら観る。ハムレットならガールフレンド、ロミオとジュリエットなら同性の友人、ロック・スターなら本人。ハラハラしながら観ていたら、死んだのは犬である。犬。いや、確かに犬は飼い主にとっては家族だし、殺したら恨まれるだろうけども。私も犬好きだし撃ち殺すなんて酷いとは思うが、この場面で犬。ははは。
こうしたハリウッド的小市民の中でマジにいっちゃってるのは戻ってきた姉のアガサだけである。家族も雇い主も汲々として等しく病んではいるのだが、アガサの闇だけは本質的に違うところにある。周りが軽薄すぎて1周回ってアガサがまともに見えてくる。本物の個性とは傷だというが、こういうことなんだな。
しかし思わせぶりな詩の朗読が繰り返されてたけど、あれはなんか意味があったのかね。