読了:火星の人(アンディ・ウィアー)

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)

有人火星探査が開始されて3度目のミッションは、猛烈な砂嵐によりわずか6日目にして中止を余儀なくされた。だが、不運はそれだけで終わらない。火星を離脱する寸前、折れたアンテナがクルーのマーク・ワトニーを直撃、彼は砂嵐のなかへと姿を消した。ところが―。奇跡的にマークは生きていた!?不毛の赤い惑星に一人残された彼は限られた物資、自らの知識を駆使して生き延びていく。宇宙開発新時代の傑作ハードSF。

火星にたった一人残されたなんていくらでもドロドロと発狂できそうな状況だが、マークはあくまでも明るく軽いんである。軽薄といってもいい。だがそんなひょうきん男でも優秀さは折り紙つきで、さすが火星探査に抜擢されるだけのことはある。前半はほとんどがひとり舞台なのだが平板になることもなく、嫌みがない人間性で様々な困難にもめげず、持てる知識をフル回転させ肉体的にも果敢に挑戦し続ける様には賛辞を送りたくなるし、読んでいるうちに心から助かってほしいという気持ちになってくる。
けっこうなSF度合いだと思うのだが、山あり谷あり実に楽しく話が進んでいくので、まるで娯楽小説のような域に達している。上手いなぁ。途中のショッキングな設定もいいアクセントになっていて、面白かった。