米賛歌

ぎっくり腰になってからこっち、ダイエットなるものを全廃した。夜は主食を食べないだとか、残業で遅くなったら食べても控えめにするとか、疲れてても頑張って運動するとか。我慢して我慢してそれでも全然減らなくて、挙句の果てに過労状態から体調が上手く戻らなくてぎっくり腰か、と思ったらなにもかも厭になったのである。早くいえば逆ギレである。自分の体質に逆ギレ。つまり自己完結型逆ギレだ。えぇい、もういいわ、米喰うぞー、コメ、コメ。納豆ごはんに卵かけごはん、鍋の〆はおじやで芋煮のお伴ははらこ飯。白く光る米粒。湯気とともに立ち上る香ばしさ。噛めばほんのり甘くもっちりとおかずの塩気を巻き込みながら喉を下っていく。ああ、米。米さえ食べていれば何とかなる。
米を解禁した次の日から日焼けして黒ずんでいた顔色が心なしか白く艶が出てきて、萎縮していた筋肉はめきめきと恢復に向かったのだった。野菜厨だが肉魚が嫌いなわけでもなく、ほとんど好き嫌いもないし時間があれば平日は手弁当を持って行く程度には料理もする。ついでに食べ物王国宮城の出身で酒飲みのためたいていのゲテモノも好んで食べる上に、香辛料ハーブの類もなんでもござれで海外旅行でも食では苦労したことがない鉄壁の胃の持ち主である。虫は厭、とは思うが考えてみれば子供の頃に近所の稲刈りの終わった田んぼでビニール袋いっぱいに捕まえて家に持ち帰った自家製イナゴの佃煮は普通に食べてた。今までだって食べ過ぎることはあっても栄養が足りないなんてことはまず考えられない健啖寄りの人間なのである。ただの気持ちの問題かもしれない。しかしプラシーボだろうがなんだろうが実際に効果があるのであれば問題ない。おれはこれからも米を喰うぞ。
ま、ちと運動はした方がいいと思うがね。