映画:キングスマン(監督:マシュー・ヴォーン)


世界を股にかけたスパイアクションである。国に縛られない組織らしいんだが、主催がアーサーで12人のエージェントがいるという、思いっきり英国紳士の集団である。あ、ランスロットはフランス出身だっけっか。しかしとはいえ2時間の映画で12人も出てきたら訳が判らなくなるせいか、コードネームが頻出するのは有名なランスロットとガラハットに絞られている。円卓の騎士ではランスロットはガラハットの父親だが、今回はエースだったランスロットの席が空席になったため、若者がガラハットに導かれてランスロットを目指して訓練を受けるという捩れが起きている。マーリンはアーサー王の顧問魔法使いなので、この映画でもそういう役回りだね。このへんは子供でも分かるような単純さで、あんまり凝ってない。つまり肩の力を抜いて観ていいってことだ。さあ、ガラハットは聖杯を発見できるのか?! ‥‥という話ではもちろんない。
これが良かったのは少年の成長物語でもあってこのへんをきちんと描いているところだ。そのお蔭で鼻につくほど紳士的で回りくどくてきちんとしている前半からの、唐突に変調する後半の狂気が生きてくる。きちんとしているといっても、くどいくらい過剰なしっかりしたアクションシーンまでかなりきちんとしているという意味での『きちんと』だけど。しかし花火が上がったシーンでは座席にもたれて「あーあ」とニヤニヤしてしまった。
悪役が変なラッパー富豪(サミュエルなにやってんすか)だったり義足が刃物だったりで、堅物の英国風紳士(時代の遺物)と対極をなすよう配置されている。サンダーバードっぽいセンスや007を彷彿とさせる数々のガジェットなど、全体的にレトロ趣味で私は嬉しい。非常に面白かったです。