高慢と偏見(ジェイン・オースティン)

高慢と偏見〔新装版〕 (河出文庫)

高慢と偏見〔新装版〕 (河出文庫)

読んだことなかったっけ? と思いつつ読んだが、最後まで読んだ覚えがなかったのでたぶん初読だったんだろう。漱石やラフカディオハーンをして激賞せしめた名作である。18世紀末、イギリス南部のミドルクラスの生活を描いたラブストーリーである。
難しいことは置いといても、これが面白い。メロドラマというよりは朝の連続テレビ小説のような爽やかさなのだが、ひととおりの登場人物紹介が終わったらその人間模様にページを繰る手が止まらない。非常に上品なのに現実的かつ容赦のない人物描写で、最近流行りの英ドラマのダウントンアビーも観ているが、あっちはまだ大人しいと感じるほど、主人公の身内にも諧謔の手が緩まない。特にお父様とお母様の会話がもうね、ヒドイ。(褒めている)
その諧謔は周りの人物だけでなく、主人公のエリザベスをも襲う。実に平等な目線なのである。このへんのドライさがイギリスっぽいなー、と思う。しかし心が痛くなるようなその鋭さも、将来への良い予感に支えられて成長の糧となるあたりに、まだ救いがあるのだった。
この小説のマッシュアップ小説である『高慢と偏見とゾンビ』が映画化されて、そろそろ封切になるんだっけか。そっちは読んでないんだが、ゾンビが出てきてもなるほどこれは馴染みそうで、ゲラゲラ笑って観られる気はする‥‥。