『爆クラ!』というシリーズ(?)で何度か催されているらしいクラシック音楽とトークのリスニングイベントである。今回はBunkamura オーチャードホールでクラブ・ミュージックの重鎮ジェフ・ミルズと東京フィルハーモニー交響楽団という超豪華な布陣である。とはいえ、実は現代音楽もクラブ・ミュージックもよく判っていないけど、誘われたので行ってみた。東京フィルが見たかったというのはある。
バレエ音楽「ガイーヌ」よりレズギンカ(アラム・ハチャトゥリアン)
オケによる演奏で、現代音楽だ、ということしか判らないので黙って大人しく聴いていた。そもそも現代音楽ってなんだ、というところからよく理解していないのだが、私的には不協和音や神経に引っかかる独特の間や変わった楽器の使い方、のような特徴を持ったものを総じて「ゲンダイテキダナー」と思うことにしている。
遮られない休息1・2・3(武満徹)
ピアノソロ。げ、現代的ですね‥‥どうもすみません。
水の戯れ(モーリス・ラヴェル)
引き続きピアノソロ。リフが始まった途端にふわりと空気が変わるような、鍵盤に踊る指先から小花模様が湧きだすような錯覚がした。おお。ピアノってこんなに豊かな音色なのだな。ひとりでこんな厚みのある演奏が出来るものなのだな。
交響曲「ローマの祭り」より主顕祭(オットリーノ・レスピーギ)
賑やかで楽しさが詰まった曲。1曲の中に行進曲ありワルツありで、お祭りの喧騒におけるあちこちの場面を拾い集めたもの。演奏前にキュレーターの方が「人間の耳というのは騒音の中でも注目した場面の音を聞き分ける、その場の音をズームアップして拾う機能があり、それを表現したもの」と説明していたが、とても判りやすい解説だと思った。
〜休憩20分〜
Where Light Ends-光が終わる場所(ジェフ・ミルズ)
お待ちかねの後半はジェフ・ミルズである。本人が登壇すると指笛や歓声が飛ぶ。宇宙飛行士の毛利衛さんとの交流の中で、宇宙で太陽が隠れると漆黒の闇がやってくるという話に着想を得たのだそうな。途中でヒンジが溝を滑っていく幻想を見た。
Amazon(ジェフ・ミルズ)
クラブ・ミュージックぽくなってきて、いつの間にか座ったまま頭でリズムを取り始めていた。そのことに気づいてちょっと恥ずかしくなり周りを見回したら、そちこちで頭の影がゆらゆら揺れていたので安心した。
The Bells(ジェフ・ミルズ)
クラブに何度か行ったことがあれば、「ああ、これねー」というくらい耳に馴染のある曲である。詳しくない私などはこれがクラブ音楽の基本のように受け入れてしまっていて、独立した1曲であるという感覚がない。途中のヤマ場で東京フィルの皆さんが血管切れそうに盛り上がっていて楽しそうだった。
ところでどうしてなのかさっぱり判らないのだが、生演奏を聴くと問答無用で情動が胸にせりあがってくることがある。CDや他の音源ではまったくそういうことがないのが不思議で、クラブで踊っていてもぜんぜんせりあがらない。でも生ステージを見るとたまに抑えきれなくなることがある。前にジャズの生ステージを見に行った時も涙が出て止まらなくなったことがあって、今回もなんだか胸がいっぱいになったのだった。なんなのか。なんかそういうスイッチがあるのか。