映画:ドリーム(監督:セオドア・メルフィ)


アポロが月に行く前、合衆国が初の有人宇宙飛行を達成したとき、それを陰で支えた3人の黒人女性の奮闘を描いた映画である。
見てる間中、身につまされすぎて疲れた。それにしても今から55年前の話である。黒人で女性という立場でのご苦労は並大抵ではなかっただろう。アメリカにおける黒人差別は今の日本の女性差別よりよほど苛烈で、ちょっとしたことから生命が危ぶまれる事態が起きても不思議じゃないわけで、映画ではそのへんはだいぶソフトに描かれているんだろうな。
3人の黒人女性たちだが、それぞれ非常に魅力的に撮られている。特に発話が穏やかで可愛らしい。相手を刺激しない従順さや理不尽なことがあっても呑み込んで我慢する忍耐がそういった「可愛らしく理知的な」声に現れているんだろう。生意気だと思われたら殴られたり逮捕されかねない立場がそうさせるのである。しかし才能と向上心がその奥からふつふつと湧き上がり、ちょっとずつ頭をもたげてくる。だって大人しくしていたら何も変わらない。情勢が変わったら真っ先に切り捨てられるのは女性で黒人という弱者なのだ。仕事にあぶれないためにも闘うしかない。
そう、このね、安定して気持ちよく働きたいだけなのに、それ以上になれる努力をしなければあぶれてしまうというのはとてもよく判る。別にここまで頑張りたかったわけじゃないんだ。夜学まで通って手に職つけてそこらの男性よりキツい仕事して過労死寸前まで働いて、そんで威張り散らしたいわけではないんだよ。そうしないとまともな給料を貰える仕事がなかっただけなんだ。‥‥おっと、話がずれた。
それはそれとして、音楽はゴキゲンだし女性たちは可愛らしく頼もしいし、本部長は合理的でイケてるし、いい映画であった。あと、オイラーが「原始的」と表現されていたのに若干ショックを受けた。数学の世界では50年以上前の時点でそうなのか。おいらは未だに全然判んないけど!