微熱を巡る攻防

世間の早いところでは3月くらいから自粛モードに入っていたのだろうが、こちらは現場に行かなきゃ仕事にならない職種のため、仕方なく不要不急の現場作業に通勤していたのである。仕事がなくて開店休業状態になってしまった方々も死活問題なので大変だろうが、そこは是非政府の横っ面を張って金を吐き出させてほしい。そういうことなら私も微力ながら協力しよう。みんなみんな生きているんだ友達なんだ。
しかし、低いとはいえ死ぬ可能性のある感染症が広がっている中を、大した情熱も使命感も抱いていない仕事のために、毎日不特定多数とすれ違いながら仕事を続けるのは嫌なものである。しかし現場が止まらない限り、休めない。ちなみに国交省からは2月末の時点で「コロナのせいなら工期延長に対応するよ!」という通達が出されている。工事業者にとって工期は絶対である。公共事業なら尚更だ。しかし延ばしてもいいよというお上からの通達があれば、各現場責任者の裁量で現場を休止することができるようになる、ということなのである。書類はたくさん書かねばならないが。公共と民間では違うのだが、なんとなく流れを作るのはやっぱり省庁の動きである。しかし今回の現場は止まらなかった。ただでさえ現場ってのはキツいのに、なんで戦々恐々としながら身を粉にして働かねばならんのだ。しかも慢性的に過労状態で現場が終わるたびに不調になり病院通いするわ、インフルは予防接種の期限が切れた途端にかかったこともあるし、誰が平気でも私は感染する弱った個体である自覚がある。ああ、ヤダヤダ。
と思っていたのだが、案の定というか4月22日から微熱が出はじめた。朝は低めでも夜は37℃を超える。その状態が現時点でかれこれ10日間続いている。22日より前の2週間というと、「緊急事態宣言の発令の方針」が4月6日、それを受けて会社の自粛策の一環で車通勤に切り替えられた頃である。それからも毎日出勤して作業も顔をつき合わせての打ち合わせもしてるし、コンビニにもしょっちゅう行っていたし、まあ外食はしなくなったかな、くらいの普通の生活を続けていた。現場というのは色んな職人さんが入れ替わり立ち替わり出入りするもんで、事務所は狭いしトイレは共有、挙句に無症状の可能性まで考えたら感染源などわかりゃしない。
とはいえ正直、いつもなら風邪薬のんで仕事してりゃ治る程度の症状ではある。しかしこのご時世なのでちょっとでも熱があったら仕事に行くわけにもいかないわな、というわけで水曜から休み始めてそのまま週末を超えたが状況が変わらないので、こりゃダメだと月曜に近所の内科クリニックへ電話した。これこれこんな症状なんですぅ、と訴えたら保健所に電話してくれとのことなので、言われた番号にかけるもとにかく話し中で繋がらず、呼び出し音が鳴っても誰も出ずしまいに切れた。懲りずに30回以上かけ続けたが繋がらないのでもういいだろ。仕方ない。またもや近所の内科に事情を説明して捻じ込んで診察してもらい、とりあえず抗生剤を貰ってきた。ウィルスには抗生剤は効かないはずなので、これで治ればコロナじゃない確定である。酸素濃度と呼吸音は異常なし。
抗生剤を飲み始めた次の日の火曜は熱が下がった。お、単なる過労だったか。と思ったのも束の間、水曜にはまた微熱復活である。こっちの方が平常なのではあるまいかとうっかり勘違いしそうになるくらい普通に微熱。症状としては吸い込まれるようなめまい、その他に少し喉が痛いかな? あとたまに咳が出るくらい。舌の表面がピリピリして2日間くらい味覚と嗅覚が明らかに変になったが、何故かそれだけは回復した。
腹を括って水曜にまた保健所の方へ電話したところ、一発で繋がってびっくりした。あ、祝日か。やってんだな。電話口で問診のようなことをして、その場で「可能性は低いです」ということになった。うん、なんとなくわかってた。37.5度以下の微熱が続いてるだけで肺炎の症状は皆無だし、発熱自体がそんなに高くない。帰国者との接触にも心当たりがない。まあ、死人は出るわ、重傷者はいるわで、電話も出られないくらいクソ忙しい中で、こんな軽症患者の面倒まで診られないよな。いや皮肉ではなく。しかしじゃあなんだっつー話ですよ。大人しく自宅待機するけども。
月曜に貰った薬が切れる前に、また内科へ電話して予約して診察してもらい、また会社への休業アピールと悪化した場合の対応をしてもらうための繋ぎをとっておく。ついでに他の病気の可能性を模索するために血液検査用の採血をして貰った。処方は喉用の弱い消炎剤1週間分。はい、じゃあ連休後に。しかし連休長いなぁ。その間に急変したらどうすんだ。救急車呼ぶしかないわな。
微熱とはいえ、10日以上も続くと疲れてくる。やたらしつこいウィルスで、こっちの消耗を待たれているような不気味さがある。これがただの更年期障害でしたとかならいいんだけどな。