自家漢方覚書

自己責任形漢方がよく効いているので自分用にまとめておく。私はだんだん酷くなる不定愁訴に危機感を覚えただけの素人である。自分の身体だから気軽に人体実験しているが、他人のことはわからないので興味がおありなら専門家の門を叩くことをお勧めする。人生とはニッチなものの連続なのである。

もともと背中全体が硬く強張り、全身が重怠く、運動しても疲れるだけでビタイチ改善せず、筋トレもまったく効かないので意味がない、むしろ下手に動くと怪我をしかねないので今は止めとけと整体で言われるような状態だった。しかし肩こり腰痛以外の自覚症状に乏しく、自分でもどこが悪いのか判然としない。それが鍼治療で少し持ち直したお蔭で頭が回るようになってきて、ああ、これはちょっと調子悪いんだなと自覚したので市販の漢方薬を飲み始めた次第である。

年単位で体力が落ちていたのと、鍼の先生に胃が悪いといわれていたので、元気を補う薬のファーストチョイスである補中益気湯を試したところ、身体が温まって腸が動き出した感覚があって良かったのだが、ちょっと血が下がるような貧血っぽいめまいが発生したので人参養栄湯に切り替えたら、とても調子が良くなった。日を追うごとに少しずつ怠さが抜け、肩こりもだんだん改善していった。冷たかったお腹の中も内臓が温泉に浸かっているような心地よさがあり、ドカ喰いもしなくなった。週末はほぼ寝てるだけだったのが、2年ぶりにコンタクトレンズを作りにほいほい出かけるくらいまで回復した。
ところで血液検査だと微妙に水分量が少ないから水分とってね、とお医者さんに言われるのだが、普段から水分はかなりとってるほうである。飲み物だけで1.5~2L/日くらいは飲んでる。食事もスープや鍋なんかの汁物が好きだ。お腹は緩くないし、とった水分はどこへ? むしろ夏場に熱中症予防でがぶ飲みしてるから、それが原因で胃腸が弱っている気がする。てことは水分が必要なところに回らず胃脾でちゃぷちゃぷしてる、いわゆる水帯か。というわけで2週目に五苓散をスポット的に追加投入したところ、これも調子よくて股関節廻りが何か邪魔していたものがなくなったみたいに動かしやすくなった。浮腫みが取れたんかね、見た目は変わらないけど。
しかし人参養栄湯を3週間飲み続けたところで頭打ちとなり、どうしても肋骨下側の重さが抜けない。ふむ、胃は良くなった。次は何だ。漢方では表に出てきた症状をまず改善し、徐々に不調の本体に近づいていくというような考え方があるらしい。するってーと、精神症状はまあストレスは強いんだろうが鬱っぽくはないし、喉に違和感もなく、後鼻漏はあるけどそれより腰廻りの重さと寝るときに足の裏が変に熱くなるのが気になるな。身体の不調を治せば精神的なものは自動的についてきたりするもんだ。健康診断だとコレステロール値が若干高めなんだよね。漢方で対応するのは肝と胆あたりか。高脂血症だと防已黄耆湯だけど、高血圧の人向けなんだよね。私は間違いなく低血圧だし、他の証も合いそうにない。そうすると冷えとかの虚証を何とかする方向かぁ。というわけで迷いに迷った末、杞菊地黄丸を試してみたら、これが当たりであった。ひと晩でうわ凄い、腰廻りが軽い。てか、こんなに軽くなるものだったのか。いままで何だったんだ。ちなみに杞菊地黄丸は飲む目薬といわれるらしいが、今回はみるみるうちに唾液が出て口中が潤った。
正直、こんだけ調子が落ちていれば地黄丸系だったらどれでも効いた気はする。それどころか桂枝系でも柴胡系でも他のものでも、証さえ大きく外さなければ何かしらの効果が見込めたんじゃなかろうか。落ち着いてよく考えてみると、それくらいあっちもこっちも冷えと虚労とストレスの証のオンパレードであった。なんでも「そんなもんか」で済ませていたので自覚は薄かったが、とにかく未病としては酷い状態だったっぽい。
身体が軽くなったら睡眠の質がぐっと良くなって、起きたときに「ああよく寝た」と感じるようになった。凄いなぁ、「寝ると回復する」なんて何年振りだろう。数年前の地獄をみた現場でのストレスと過労で身体が守りに入ったまま休止状態になってたんだろうな。そしてそのまま労働条件の厳しい仕事を続けていたと。薬で休眠してた内臓を叩き起こしたら、物理的にも動かして固まった身体を解さなくてはならんのだろうな。この冬はリハビリである。