銀粘土でスタイラス

はりきって銀粘土のレポートをしようと、途中で二十枚ぐらい写真を撮ったのに、一瞬の手違いで全部消えた。グレたい。
しかしやれば出来る子頑張る子なので(なので?)、気を取り直して再現できるところは再現してみた。
今回作るのは、Advanced[es]のタッチパネル用のスタイラスペン。買ったときはもちろん標準装備でついてきたんだが、一週間でなくした。以来、爪の先でちょいちょいとやって間に合わせてたんだが、やっぱりもう少し細くて確実に狙ったところを触れるのがあったほうが便利である。そんでデンワで使うものだから、ストラップにつけて邪魔にならないくらいのものが欲しい。
買ったのはコレ。
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あ、そういえば添付のDVDがあったんだ。見るの忘れてた。

1.準備

ある程度持てる部分があって細い突起がついている形状の小さな物体というのが今回のお題である。
で、思いついたのが觔斗雲(きんとうん)。
まず大きさ形を決めて、描いておく。文字通りチラシの裏に描いた。
これを二十センチくらいに切ったクッキングシートの片隅にも写しておく。
あと、水と筆を用意しておいたほうがいい。手を洗い、余計な油分は落としておく。
紙がヨレているのは、ゴミ箱から拾ってきたからである。

2.形成

パッケージから中身を取り出してみると、こうなっている。
意外と小さい。これで10gである。折りたたんだペラい紙の取説も一緒に入っているので、外から触った感じでは大きさが判りづらいのだった。
パウチを開けると更にフィルムに包まれた粘土が入っており、それを二重にしたラップに挟んでもみほぐす。
で、こっからが勝負である。作業は準備しておいたクッキングシートの上で行う。
感触は粘土の粒子が大きく、割とボソボソしている。丸めたものをぎゅっと潰すと、周りにひびが入る感じである。これを柔らかくするには水を足せばいい。開封した時点では手指につくことはないが、ちょっと水を足すとメロメロと溶けてきて指先が真っ白になる。
パーツごとに形を作ったものは、なかなかそのままではつっくかない。くっつけたい部分を筆で湿し、更に並べた上から筆でなじませるようにするとうまく付くようだ。取説を読むと接着用ペーストの作り方というのもあって、細かくちぎった粘土を水で溶かして筆で塗るというものであった。つまりその場で表面を溶かしつつ使っても大した違いはなかろうと私は判断しそのようにしたが、オススメはしないでおこう。
引き写しておいた下描きに乗せて大きさ形を確認しつつ、何とか形を作ったら、紐を通す穴を爪楊枝で開ける。楊枝を濡らしておくと作業しやすい。あと、模様をつけるならこの時点で。
私が使ったのはスロードライタイプだが、それでも水分が飛ぶのがけっこう早い。環境は真冬で部屋はエアコン暖房の微風、洗濯物を室内干ししており加湿器までついていた。さっさと手際よくやらないとうまくない。ひねりだしてからアレコレ迷ってる暇はないと思ったほうがいい。
あと、細かいものならシリコンで型を作っておいて、それに押し込むほうがうまくいきそうだ。手間は尋常じゃないがな。

3.乾燥

形が出来たら乾燥である。取説を見ると、ドライヤーの温風で合計四十五分以上ふむふむ‥‥よ、四十五分?!
小一時間もドライヤーを持っていられないので、私は写真のようにした。
しかし四十五分ともなると下手すると火災の危険もありそうなので、そばを離れるわけにも行かない。熱くなりすぎてないかちょこちょこ確認しつつその場でビリーでもしながら待っていよう。
乾燥チェックは、ドライヤーから外してすぐにガラスや平滑なステンレスなどの上に置いてみて、周囲に曇りが出なければいいという。そこで熱くなったブツをピンセットでつまみ、鏡の上に置いて確認。よしよし、乾燥完了である。
表面は真っ白な物体になっている。すでにこの時点で、金属らしい持ち重りがする。

4.焼成

乾燥したらバリを取り、表面を平滑にする。スターターキットには細いヤスリの他に3Mのスポンジ研磨材が三種類入っているので、ここでは赤の粗目を使う。穴の周囲は小さすぎてヤスリも入らないので、私は手持ちの細密彫刻刀を使った。この時点で最終的な形を決める。
この段階では少々硬いもののまだ刃物が使えるんだが、ちょっと驚いたのが刃物で削ると白い表面の下は既に銀色に光っていたこと。おぉー、と気分が盛り上がる。
焼成したら一割弱ぐらい収縮するらしいので、それを見るために鉛筆で紙に型をとっておく。


5.焼成

ガスコンロにキットに入っていた網を載せ、その上で焼く。
強火で五〜十分程度ということなので、またしてもその場を離れるわけにもいかず、台所で立ったままコーヒーを入れて一服。
時間が過ぎて火を止めてみたら、白濁した表面の下でうす朱く内部が光を発していた。金属が熾っているのだな。ほほぉーっと感動して、そのまま二十分以上放置。その後、ボウルにはった水に放り込んで完全冷却。

6.研磨

キットに入っている金ブラシで表面の白い皮膜を落とすと、もうそこは一面の銀世界である。
金ブラシだけで仕上げにすれば梨地、スポンジ研磨材の赤だけを使えばヘアライン、緑と青も使い、パウチの研磨剤をつけたクロスで磨けば鏡面仕上げとなる。他にいぶし剤も入っていていぶし仕上げもできるが、今回は見送った。手で使うものなので何もしなくてもどうせすぐに黒くなる。

7.出来上がり

焼成前にとっておいた型に載せてみると、確かに一回り小さくなっている。
というわけで、觔斗雲だか松だか一枚葉っぱの取れた四葉のクローバーだかよく判らないが、形はともかく銀粘土を焼成することには成功したようである。
本当に金属が出来たよ‥‥自分の手でひねってこういう硬いものが出来るって不思議に嬉しいなぁ。
今回は初めてのこともあり、デザイン的には単純に簡単にしたのだけど、次はもうちょっと細工っぽくしてみたいなぁ、と思った次第。ピアスでも作ってみようかな。
で、コレがホントの錬銀術‥‥すいません、言ってみたかっただけです。