荒野に猫は生きぬいて(G.D.グリフィス)

小学校の図書館で一番印象に残っている本は『荒野に猫は生きぬいて』という児童書だった。
細かいところは覚えていないが、童話というには殺伐としていて現実的で残酷で希望に満ちた話だった。
飼い主によって荒野へ捨てられた子猫が、寒くてひもじいその日その日をやっと凌ぎながら生きていく。食べ物を摂る/盗ることを覚え、どうやって寝れば安全なのか身を以って知り、露命を繋ぐうちにいつの間にか大きくなって、身体の成長とともに中身も文字通り強くなっていく。
生きるっていうのはそういうことだと諭す、乾いた感触が忘れられない。今でも人生の手触りはあの荒野の土ぼこりと寒風と冷たい雨の繰返しの中にある。束の間の日なたの暖かさを楽しみ、また狩りへ出掛けていく。
くそぅ、タネローンは何処だ。

荒野にネコは生きぬいて (文研じゅべにーる)

荒野にネコは生きぬいて (文研じゅべにーる)

藍色さんの感想→『荒野にネコは生きぬいて G.D.グリフィス、福永紀子、前田三恵子』