視力嗅力

私は目が悪い。
単純に視力が低いのも低いが、あまりモノをよく見ていないらしい。
遺伝的に近視で乱視なので、子供の頃から廻りがよく見えていなかったため、外界を感知する際には、あまり視力を使わない癖がついているのかもしれない。などと取って付けた説明をすれば、それっぽいが、実際は単にズボラなだけだろうな。
モノの間を縫って歩く、というのが苦手。事務所の中で、しゅっちゅうプリンターやパーティションに、手足をぶつけている。というか、ぶつからずに歩けたためしがない。
自動車を運転しているときはぶつけない。が、歩いているときは擦って歩く。クルマをぶつけたら万単位の出費になるが、身体なら痛いだけで済むからだろうな、やっぱり。ということは、気をつければちゃんと避けられるわけだ。ぶつかるのは注意力が散漫になっている証拠じゃないか。
人の顔を見ていない。話すときも見ていないが、外を歩いていても周りを見ていないので、知り合いがいても、手を振られても、気付かないでいることがある。友人と連れ立って歩いていて、「ねぇ、今の人見た?」と訊かれて話が合ったことがない。でもまあ、躁鬱で分裂気味で対人恐怖のケがあるから、これは仕方ない。
以前、ちょっとおかしくなった時期に、人の顔の見分けがつかなくなったこともある。コレは困る。映画を見ていても、短髪男性の服装が変わると、誰だか判らなくなってしまう。女性は割りと髪形で判断できるが。
何でも漠然といい加減に大掴みにするので、一字違うとか数字にこれだけ差があるとか、そういう細かいことがよく判らない。よく判らないというか、よく読めば理解はできるが読み解くのが面倒臭い。
その代わりといっては何だが、嗅覚は変に鋭い。馴れた人なら、匂いでその日の体調が判るくらいだ。とヒトに自慢したところ、「オマエは動物か。トリュフ探して来い」と突っ込まれた。
こんなに目を使うのが苦手なのに、どうして本を読むのは好きなのか。とても不思議だ。