猫の戦略?

以前叱られた猫だが、その後も何度か顔をあわせている。いつも帰宅途中の細い階段の途中のどこかにいる。
こちらが階段を登り始めると、相変わらず「にゃおー」と鳴く。薄暗い階段の奥、声がするほうを透かしてもよく見つけられず、近くまで行ってやっとどこにいるか判る。
最初は切羽詰った様子で騒いでいたのだが、段々声に力がこもらなくなって、今は挨拶程度に鳴くだけである。
三毛なので暫定的に彼女ということにしておこう。
階段を通る人毎にいちいち声をかけているんだろうか。よく判らない。
しかし明らかにこちらに向かってアプローチしてくる猫というのは心をくすぐる。何度これからは常時ポケットに煮干をしのばせておこうと決心しかけたことか。それが彼女の思う壺なのかもしれない。だが未だにその準備はしていない。これからもしないと思う。猫は猫である。


初めの頃の慌てっぷりは何だったのだろう。
迷子か。猫が何かの拍子に縄張りの外にはみ出してしまって、そこを仕切る猫に追い立てられさらに遠く離れてしまうことがあるんだそうだ。そうすると現在地から自分の縄張りに戻る道程に他の猫の縄張りが挟まってしまうから、戻るに戻れなくなる。
彼女もそんな迷子の一匹なんだろうか。
それとも、これも彼女の戦略か。