リクエスト

ふと気がついた。
同居人は洋食が作れない。
何も作れないかというと、もちろん炒めて水入れてルーを入れるだけのようなものとか、生野菜をちぎってドレッシングかけるなどはできる。おそらくレシピと材料が揃っていれば上手下手は別としてだいたい作れるのだろうけど、そういうことではなくてカンがないのだ。そこにある食材を見てじゃあ今日はコレをどう調理しようか、というときに洋食メニューが出てこない。ハンバーグもシチューも出てこない。だからウチの食卓はいつも和食か中華である。
どちらも私は好きだが、洋食も大好きだ。なかでもトマトとチーズ*1が好きだ。できればしょっちゅう食べたいぐらいには好きだ。
そこで洋食が食べたいと訴え出たところ、滞在したことのない地域の料理は作れないと断られた。彼は若い頃、中国は上海から漠然と南シルクロード近辺を縫いながらパキスタンまで旅をした。そのあたりで体力の限界と蛇口をひねれば出てくる水への強烈なホームシックと政情不安に阻まれて、あえなく帰国したんだそうだ。だからヨーロッパには到達できなかった。したがってその先の食べ物はよく判らないという。
ンなわけあるかいッ! という心の叫びはさておき、いつも作ってもらっている立場としては、あまり文句を言うのも憚られるので考えた。
ふ〜ん、じゃあ、ウイグル料理作って。
今までの話を聞く限りでは、確かウルムチあたりにはうるるんしていたことがあるはずだ。ウイグル族が住むウルムチといえば東西の要衝、中国側から見ればすれすれ西胡‥‥かもしれない地域である。トマトと羊のうどんの土地である。トマトが食べられるなら、この際、チーズは羊の乳ので我慢しようじゃないか。
今夜の食事が楽しみである。

*1:パンも好きだ。笑う犬でアタマの悪そうなヤンキー娘が「なに食べてぇ?」と訊かれていつも「パン」と答えるネタがあったが、私もそれくらいは好きだ。