佐々木丸美復刊

佐々木丸美のシリーズが復刊されつつある。
崖の館 (創元推理文庫)水に描かれた館 (創元推理文庫)風花の里 (佐々木丸美コレクション)花嫁人形 (佐々木丸美コレクション)佐々木丸美コレクション2 忘れな草
初めは図書館で借りて読んで、しばらくたってから文庫に落ちた本を買った、私にとっては数少ないパターンのひとつだった。実家に置いてきたが、今もあるだろう。
濃密なようで薄いような独特の世界観で、どっぷり嵌ったというのともちょっと違い、なんというか隣の世界を覗き見るような面白さがあったように思う。ファンタジーに近いか。
雪の断章は斉藤由紀主演で映画化されたっけ。
その後いつからか佐々木さんは書くことを辞めてしまい、既刊も絶版になってしまっていた。
断崖絶壁の上に立つガラスの館は憧れたなぁ‥‥どうも私は本を読んでも建築物が気になるらしい。
一冊一冊はリリカルで叙情的なシンデレラストーリーだったり、ミステリーというには無理のある話*1だったり、寓話のような勧善懲悪モノだったりする。だが読み進めていくと、シリーズの垣根を越えて登場人物が交差し、三世代に亘る確執と抗争が浮かび上がるのだ。それも限られた人数で語られていくので箱庭的なのは否めないのだけど、それも主眼は巨大な社会悪などでは断じてなく、情の面から現実の哀しさを透かしてみると、こうなるのが当たり前なんだろうと思われる。巨悪だ社会だと大言壮語してみても、結局ひとりの人間なんてそんなにご大層なもんじゃないってことだろう。
ごちゃごちゃ言っても大事なのは情、素直に幸せになること。
今にして思うと、佐々木さんの価値観や世界観には、自覚のないままにかなり影響された気がする。

*1:ミステリーだと思って読むと肩透かしを喰らわされる。どちらかというと、犯罪に至るまでの心理を追う叙情的な読み物なんだろう。