青空文庫:海野 十三

青空文庫ショートショートのようなごく短い話をいくつか読んでみた。

◇「ある宇宙塵の秘密」

航空テレビジョンを開発した恩師は一塊の宇宙塵になってしまった。学者的熱情が嵩じたあまり、ロケットを盗んでまで前人未到の実験を敢行したのである。
航空テレビジョンというのは今でいうテレビのことではなく、ここではテレビ電話のようなものだ。それも宇宙空間を隔てて音声と映像をやりとりできるもののことらしい。
アイディアはさすがというもので、万有引力の中点だとか確かに今読むと実際どうなのよ、と思わざるを得ないものがあるのだが、それはそれである。最後の幕引きといい、SFとはかくあるべきだ。

◇「暗号の役割 烏啼天駆シリーズ」

五十音順で並べられている作品を頭からDLして読んでいるので、烏啼天駆シリーズの何たるかもよく判らないままつまみ食いした格好となった。つか、今でもよく判ってないが。
探偵袋猫々(ふくろびょうびょう)が酔っ払って公園で拾った鞄には、仇敵である烏啼組に関する重要な書類が入っていた。それを落とした男を捜すうち、ある暗号で書かれた手紙が手に入る。この暗号解読が物語の焦点で、発端となった事件の顛末は語られないまま終わる。

◇「暗号音盤事件」

大戦中のヨーロッパでの諜報活動の話。私は勇猛密偵・白木とともに、暗号を探してゼルシー島はメントール候の城砦へ行く。密偵というのはいわゆる諜報員(スパイ)のことらしい。ゼルシー島とは白木曰く「ジブラルタルから南西へちょっと一千キロ、マデイラ群島群中の小さな島だ」
銃撃戦あり謎解きあり、軽機関銃をステッキに仕込むという小ネタもあり、どきどきわくわくのスパイ活劇である。


海野十三は初めて読んだのだが、昭和の少年誌らしい黄ばんだ紙の匂いがする。ガガガ文庫になったんだっけ。超訳跳訳するとどうなるのかちょっと興味はあるが、このまま読むのも乙なものだと思う。