ああそうか

なんとなく判ってきた。
私は自分の部屋を荒らされるのが厭なんだ。
友人を泊めたくないとか誰も入れたくないとかいうような極端な話ではなくて、道具とか本とか、フェイバリットに囲まれて居心地良くしつらえた極微の私的な空間を、日常的に他人に手を入れられたり片付けられたり、物を置いた位置から動かされるのが厭なのだ。
自分で手の届く範囲だけの、他人にどうこう言われる筋合いのないほどの、ごく小さな身の回りの空間。暑くも寒くもないようにわざと手をかけて整えた場所。外で厭な目に遭ったときに逃げ込む、小さく囲われた安心できる自分だけの空間なのだ。
いま住んでいる部屋の中でも大部分はわりかしどうでもよくて、細かい道具と本が入ったカラーボックスとテーブルの間あたりから布団にかけての二畳ぐらいの部分がそれに当たるのだと思う。
本当はもっとコンパクトに纏めたい。いまは部屋のつくりの都合があって、ミシンは押入れで大工道具は別の物入れ、裁縫道具はこっちという具合にあちこちに偏在している。それを全部一箇所に収納して、その前に陣取って一日過ごしたい。そこだけあれば幸せだと思う。小さくきゅっとまとまってしまいたい。ひとりで巣ごもりしたい。
荷物を増やしたくないのは、手の届く範囲に限界があるからかもしれない。