映画:ウォンテッド(監督:ティムール・ベクマンベトフ)

彫金を施された弾丸がカッコイイ。宇宙ロケットが打ち上げの際に使い終わったブースターや燃料タンクを切り離しながら離陸するように、長〜い銃身から発射された弾が、いくつかの部品に分かれていきながら目標に向かってぶっ飛んでいく。はたして性能的にはどうなのか知らんが、まあ、野暮はいいっこなしだ。だって腕をぶん回しながら撃てば、弾道がサイコガンみたいに曲がるらしいし、走ってる電車より人の脚力のほうが速いことになってるし。
『1を殺して1000を救う』というそもそもの設定がイマイチ解せなくて、見てて入り込めずにちと途中で飽きた。
紡績工場が舞台になっているのだが、人の運命が糸に喩えられるのはギリシャ神話のモイライか、と気がついたのは帰宅した後だった。現在を司る女神クロートーが糸を紡ぎ、繰り出された糸の長さを過去の女神ラキシスが測り、もう十分だと判断されたところで未来の女神アトロポスが鋏で糸を断ち切るというアレだ。文化圏の違いで欧米では説明不要なので端折って映画が作られるが、日本人が見るとナニがナニやらホニャララというのはたまにある。それにしたって大雑把過ぎないか、住所とか年金番号で識別するとかしないとマズイんじゃないの、と重箱の隅が気になって仕方がない‥‥。
んで、結局救えてないじゃん! あまりの本末転倒なスペクタクル展開にポカーンである。よく考えると辻褄は合ってるのが、逆に妙に悔しいくらいだ。
紡績工場のびっしり並んで掛けられた糸や、高架脇の部屋など映像は雰囲気があってよい。アンジェリーナ・ジョリーはキレイだし。石造りの建物内で容赦なく殴りあうところはファイトクラブみたいだし。
しかし、あのなんでも回復してくれる風呂がウチにもひとつ欲しい。心理的疲労も回復してくれないだろうか‥‥。