SF話のついでに眉村話

こないだ色々思い出したついでに記憶の奥から出てきたんだが、眉村卓の『ルドルフォ』ってどうなったんだろう。ハードカバーで二冊買ったきりになっているんだが。途中で煮詰まってほったらかす作家さんではない、逆に物凄く堅実着実なイメージがあるので、なんかいろいろ拠所ない事情があったのだろうか。
更についでに眉村卓の私的ベストはコレ。

不定期エスパー〈1〉護衛員イシター・ロウ (徳間文庫)

不定期エスパー〈1〉護衛員イシター・ロウ (徳間文庫)

八巻まである長編だが、中ダレすることもなく一気に読める。
優秀ながら不定期にエスパー化してしまうという生まれつきのハンデ(そういう社会設定になっている)を背負うイシター・ロウ。平和な学生生活を終え、階級社会でコネが横行する現実と直面し、厳然とした壁を実感する。それでも星間戦争中にもかかわらずそのとき彼がいるのは前線とは程遠い、煌びやかな夜会が開かれるような比較的安穏とした空気の惑星なんである。そこで彼が護衛員として就職したのは名家エレスコブ家である。美しく明晰な令嬢エレンは生まれながらにして政治的な使命を負う立場であった。一方、謎の集団デヌイベがイシターに接触してくる。やがて彼はちょっとした失策で職を失い、兵士として前線へ送られることになる。
内省的な少年の思考をきっちりみっちり積み上げていきつつ話が進む。運命に弄ばれて変転していく主人公イシター・ロウは半ば狂言回しで、彼の考えることや状況によって実は社会の有り様が描かれているのだ。その場その場の悩みは、状況が変わるごとにどんどんより大きなものに取って代わられていく。しばらくして振り返ると、なんと昔は平和だったことかとノスタルジーすら感じられるような精緻な心理描写で、少年が一人前の男に成長していく過程を追うのだ。どうだ、まいったか。(何がだ)
って、また絶版‥‥。