DVD:トゥモロー・ワールド(監督:アルフォンソ・キュアロン)

西暦2027年、人類は18年間の長期に渡って子どもが生まれない未曾有の異常事態が続いており、このままでは人類絶滅の危機は免れなかった。そんな中、国家の仕事に就くテオ(クライヴ・オーウェン)が、人類存続に関係する重要な情報を握り始める。人類の未来はおろか自分の将来でさえ興味を示さないテオだったが……。

これは面白かった。もう少し早く観ていれば、こないだやったゼロ年代のベストテンに入れたかもしれない。
ディティールが細かく作りこまれていて『ちょっとだけ未来』の空気感がまるで本当に切り取ってきたかのように説得力を持ってそこにある。赤ん坊が生まれなくなった世界では、最年少の人物が世界的に信仰を集める勢いでアイドルになり、種の未来を失った人々が徐々に混乱に陥り、各地で内戦が勃発。先がないということは人を蝕む。それを細かく検証し描写してある様は、まさしくSFである。
背景となる舞台もイギリスなのがよかったんだろうな。古くから連綿と続いてきた伝統を感じさせる街並みがあり、一方でもう新しいものは生まれないのだという絶望が際立つ。美しい緑の田園風景の中に唐突に牛舎だったとおぼしき焼け跡が現れる。テロ組織に爆破された痕から煙が燻り、黒コゲの倒れた牛だったものから蹄だったものが焼け崩れる。この落差、アメリカではこうはいかない。
長回しによる臨場感も凄まじい。乾いた発砲音やカメラにはねた血しぶきも、内戦のドキュメンタリーを見ているようだった。
それにしてもジャスパーの隠れ家はいい雰囲気だったな。ああいう家に住みたい。