DVD：ベンジャミン・バトン 数奇な人生（監督：デビット・フィンチャー）

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 [DVD]

80代の男性として誕生し、そこから徐々に若返っていく運命のもとに生まれた男ベンジャミン・バトン（ブラッド・ピット）。時間の流れを止められず、誰とも違う数奇な人生を歩まなくてはならない彼は、愛する人との出会いと別れを経験し、人生の喜びや死の悲しみを知りながら、時間を刻んでいくが……

いってしまえば瀕死の老人で生まれて肉体年齢を逆に遡っていく男の話である。しかしそこには時の流れに阻害された孤独感が丁寧に描きこまれていた。
ひとりで行動しているぶんにはいいが、例えば初老の男が若い女性に恋をした場合、その若さから来るノリや仲間内の破廉恥なほどの勢いの中に入っていくことは難しい。どうしても浮いてしまう。そういった人の間で感じる更なる孤独である。本当に年を取っているのなら、自分にも昔そういう時期があったし、若いもの同士で楽しくやればいいさと微笑ましく眺めることもできるのだろうが、このベンジャミンは同年代なのである。なのに仲間に入りたくても入れない。
ほぼ同じくらいの時期に同じような経験をして、同じようなペースで成長していける同年代の友人というのは、人生において貴重なものである。私にも経験があるが、離れて暮らしていてもふと連絡を取り合ってみると、やっぱりなんとなく同じような境地に至っていたりする。進む道が違っていても、人間的な成長やら肉体的な悩みなどは通底している。独立しつつも共に歩んでいける友人がいるのは、とても心強いことなのだよな。