物欲、自動車。

ベンツかぁ‥‥ベンツねぇ‥‥ゲレンデバーゲンが欲しいらしい。熊川哲也が乗ってるヤツだ。
以前は自動車通勤をしていたが、今は車を持っていない。今住んでいる所は、公共交通機関でほぼ事足りるので、なくても生活上は困らない。それでも毎年冬になると、車があってもいいな、と思うことは多々ある。なにせ、寒い。
田舎に行けば行くほど、自動車がなくては生活が成り立たないというのは本当で、更に年をとればとるほど、も同義だ。高齢化の進んだ過疎地ほど、自動車:人数の比率が1:1に近づく。
話は飛ぶが、父の生まれた家は、日本でも有数の穀倉地帯にある。ちょこっと固まった集落の廻りには、見渡す限り、本当に地平線まで延々と田んぼが広がっている。その所々にこんもり盛り上がった土地があり、それぞれ集落があるのだが、防風林に囲まれて家屋は見えない。
子供の頃、帰省する車に乗せられて外を眺めると、機械植えの稲の列が規則正しく、いつまでもいつまでも後ろに流れていった。ずっとそれを見ていると、退屈さも相まって、トリップしそうだった。
まっすぐな農道、どこまでも平坦な田園。幾何学的どころか何もかもが四角で、土と植物の風景なのに、とてつもなく人工的で、しかも人の気配がどこにもない。周囲は稲という食物だらけで田んぼには水が満ちていても、口にすることは出来ない。この水っぽい砂漠の真ん中で車から置いていかれたら、乾きと飢えで死んでしまうかもしれない、と子供心に妄想した。
生きていく術を身に付けなくてはいけないと覚った、最初の瞬間だったかもしれない。
で、初めの車の話と何の関係があるのか判らないが、とりあえずまだ自家用車を持つ気にはなれないな。