- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/12
- メディア: 単行本
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百物語シリーズは前作で終わったかと思っていたのですが、続きがあったらしい。
江戸時代以前というと、なんとなく別世界の話のような気がする。遠い昔の話で、他人事としか思えない。それが明治になると、ぐっと身近になる。自分のお祖父さんお祖母さんか、その前くらいの世代だし、もしかしたらまだ覚えている人もいるかもしれない。それが戦後になれば、もう親の世代だ。私は戦争を知らないけども、親の兄弟には戦死した人もいる。すっかり現実的な話だ。
物語の舞台は江戸時代だったけれど、タイトルに「後」と入っていて、「のちの」とルビが振ってある。今までの「百物語」は今現在か少し前の体験であるような体裁で書かれていたけれど、今度は時代が下って明治十年、百介はすっかり枯れた爺になっていて、昔話をするというかたちを取っている。
物語における現在を生きている登場人物たちは、動乱の世に育って旧幕時代は藩士だったり剣豪に教えを受けたことがあったりして、新体制になったらまた違う生業になったりという状況で、江戸の昔を地続きに感じ、回顧している。それを読みながら、私は江戸は遠い昔で実感できないけれども、明治の青年たちのことは少しは身近に感じている。そんな世代の繰り返しが時代を作るのだなぁ、と妙に実感する。
で、最後のほうにちらりと出てきた和田智稔和尚。あれ、鎌倉の和田和尚‥‥といえば、あれか、「鉄鼠の檻」に出てきた和田慈行の祖父だった。京極堂のシリーズは戦後十年くらいの話なので、一気に昭和半ばまでつながったよ。
こんな時間の流れに、少し眩暈を覚えるような仕掛けなのかなと思う。いやはや、又市さんの仕掛けは凄いよ。