出発前夜

なんだか非常にメローな気分である。
生まれて初めて地元を離れる、しかも逃げも隠れもしない自分の意思で、というのが緊張を生む。物事が上手く転がりますように。そんな”希望”や”願望”があると、臆病になる。最初から”どうせ”と締念があれば、そんなに緊張することもない。
置いて行こうとしているものの価値と、先の見えない将来。希望。不安。人生とは取捨選択である。何かを選び取るとき、もう一方を切り捨てているのだということを実感する。
この年まで御生大事に抱えていた何かを、今になってえいやっと手放そうとしているような気がする。手放す段になって惜しくなるとは、意地汚いというか、なんというか。いや、そんな大層なものでもないのだろうが、ただ感傷的になっているだけだ。
どうにかしようと思うと気が重くなるので、とりあえずあと十年生きてみようかな。