読んだもの

電子書籍だと新しい本を買ったり持ち替えたりする必要がないので、抵抗なく次々と読みすすめてしまう。この感覚は一冊の本に短編がいくつも入っているのと似ている。本棚というより、たくさんの作者のそのまたたくさんの作品が収められている一冊の本だ。
画面で活字を追うのってどうかな、読みにくくないかなと最初は懸念していたのだけど、ビューワーのおかげか思ったよりずっと読みやすい。もう手放せない。

海野十三

  • 暗号数字

帆村荘六あらわる。友人に職業上の面白い話をせがまれても、企業秘密はおいそれと話せない。じゃあ喋っても平気な話を、というのでこっぴどくやられた失敗談を話し始める。それは算数とパズルを駆使した暗号事件だった。ひとつヒントを得ると次のヒントの隠し場所が判る。それをどんどん追っていくと‥‥。

  • 火葬国風景

死んだはずのアイツと夜の街でばったり出合う。

  • 十八時の音楽浴

天才科学博士コハク氏が開発した音楽を聴かせると、人間は従順になり作業能率が飛躍的にアップする。ミルキ大統領は国民にそれを毎日三十分ずつ聴かせることで、すべてが自分の思いのままになる管理社会を実現させていた。しかし愛人にしていたアサリ女史が暴走し始める。
ガガガになったという話題から、原作を先に読むかどうか一応迷ったはずなんだが、気がついたら次の日に速攻でダウンロードして読んでた。

菊地寛

失踪していた山師の父親が二十年ぶりに帰ってきた。父が不在のせいで散々苦労してきた息子との邂逅。脚本。

プライドを傷つけられた腹いせに行き過ぎた復讐がまた復讐を呼ぶ。大ヒットした数年前の昼ドラの原作である。以前話題になったときのことは「貞操帯!!」しか記憶にないんだが、原作には出てこないようだ‥‥。息をもつかせぬ波乱万丈に夢中になって、電車を乗り過ごしそうになったよ。大正のレトロな文体なのだけど、読み難いどころか物凄い吸引力がある。良く判らないけど、こういうのが所謂上手い文章というのだろうな。