カチーン

いま通っている現場事務所は、ひとつのフロアを他の会社さんとシェアしている。
その他社の人に、私がひったくりにあったことについて、ちょっとカチンとくるようなからかいを受けた。
内容はたいしたことではないにしろ、小さいとはいえ一応犯罪の被害者がまだ心理的に立ち直っていないうちに、笑い話でおとすって、どうなのよ。しかもずけずけと揶揄されて笑って赦せるほど、一ヶ月前に会ったばかりのアンタに親しみを感じてないんだけど、私?
職場の付き合いだし普段ならちょっとぐらい「つまんねーよ」と思っても調子を合わせるぐらいの事はするが、今回は敢えてムッとしたのを隠さず無視した。悪いとは思っていない。私だって譲歩できるときとできないときがある。
しかしそういう鈍い手合いは、こちらが黙っているとわざとらしく重ねて話しかけてくる。和を乱すなという嵩にかかった圧力はきちんと感じるのだが、我慢してまで守りたいような和じゃなければそれまでだ。私の堪忍袋の尾は脆い。
個人のデリカシーの問題だけど、ただでさえ人をおとして笑うっていうのは、ある程度やりあう人同士の間で親しみや愛情を感じてからじゃないと受け入れがたい。私がガキ使らへんの黒い笑いが苦手なのは、そこらへんに居た堪れなさを感じるからだ。子どもの頃にいじめられっこだったトラウマがそこにある。