映画:チョコレート・ファイター(監督:プラッチャヤー・ピンゲーオ)

日本ヤクザと現地マフィアが抗争するタイで、タイ・マフィアの女性ジンは日本人ヤクザのマサシと恋に落ちてその子を宿す。月日が流れ、マフィアから足を洗ったジンは、娘ゼンと二人で暮らしていた。ゼンは自閉症だが、アクション映画のビデオを見ただけでその技を習得できる並外れた身体能力を持っていた。重い病にかかった母ジンの治療費を稼ぐためにゼンが行った行為が、ジンの昔のマフィア仲間の注意を引き、母娘に危機が迫る。

マッハ!!!!!!!!』のプラッチャヤー・ピンゲーオ監督の新しいアクション映画である。
ピンゲーオ監督の作る映画の役者たちは、身体の動きがまるで体操選手の競技のように華麗で美しい。やっぱりベースにムエタイの動きがあるんだろうか。今回のヒロイン役であるジャージャーも可愛らしい顔立ちに華奢な体型で、それでいて実にキレのいい蹴りを繰り出す。無防備な構えから面白いほど速い蹴り。どんな身体能力してるんだ。まるで演舞を見ているようで目が離せない。
ストーリーは若い頃はワルだったお母さんが大病に倒れ、何も知らない子どもたちが治療費を工面するために、昔お母さんが貸していた借金を暴力でもって取立てて回るというもの。って、なんかお母さんが病気で哀しい、お金を返してくれない悪い奴らって構図に騙されそうだけど、よく考えるとヤミ金の取立てでボコボコかよ! しかも昔組んでた男は無視して丸取りって、そりゃ怒るわー。
しかしヒロインのゼンは自閉症で一部の機能が人並み外れて発達しているサヴァン症候群という設定で、難しいことや細かいことにはお構いなしなんである。刃物を出されても銃を突きつけられても判らないので怖くない。心優しく面倒見のいい幼馴染にサポートされつつ、協力し合って事を成し遂げるハートウォーミングなおはなしでもある。
そしてゼンはタイ・マフィアの一員だったお母さんと日本ヤクザのお父さんとのハーフである。この日本人のお父さん役が阿部寛なんだが、日本刀を持って暴れてると刀よりも足のが長い。さすが阿部ちゃん‥‥キライじゃないわ。脇に出てくるドラッグ・クィーンのおねぇさま方も強烈で、ズドンバキュンと遠慮なく銃をぶっ放す。もう何もかもイッちゃってる。
タイの青空のようにスコーンと突き抜けた、観るも爽やかな(え)アクション映画であった。