ソウル・フード 2011

秋も深まりいよいよはらこ飯と芋煮の季節である。年に一度は作らずにはおれないソウル・フード

はらこ飯というのはつまり鮭の炊き込みご飯にイクラを乗せた鮭版親子飯で、川を遡上してきたのをとらまえてその場で飯にしてしまおうという単純極まりないものである。だから本来は塩をしてない生の鮭とイクラの醤油漬けを使うのだろうが、今回使ったのはカナダ産の塩鮭とロシア産のイクラなのだった。いまは年中材料が出回っているんだし、そんなに好きならもっとしょっちゅう作ればいいようなものだが、やっぱりこの季節にだけ食べるのがいいものなんである。
芋煮については早い話が里芋の豚汁である。私は仙台出身なのでね、芋煮といえば豚肉の味噌仕立てなのだ。牛の醤油も美味しいけど、あれは別の食べ物。とはいえ芋煮でいうところの芋は里芋のことなので、総合すると里芋が煮てあればいいのだが、これが好き嫌いがあってねっとりしたのが厭だというひとも案外いる。だから県外のひとや人数の多い集まりではじゃがいもを使ったりもするが、それだとただの豚汁と変わらなくなってしまうのだった。
河川敷などで煮炊きする野外料理で野菜に火が通れば食べてよしというこれまた単純なものなので、口に入れたときに味噌の角がたち野菜それぞれが味を主張しあう野趣溢れる状態が好ましい。ついでに薪で燻されて灰が入ったようなキナ臭さが鼻につけば完璧だが、家庭のガス台ではさすがにそこまでは望めないのだった。