映画:ミッション:8ミニッツ(監督:ダンカン・ジョーンズ)


しばらく忙しくて劇場へ足を運べなかったのだが、前作の『月に囚われた男』も素晴らしかったし、どうしても観たくてレイトショーで滑り込みで観てきた。その甲斐のあるいいSFであった。
死んだ人間の最後の8分間に割り込むことで、過去を探ることができるプログラムが完成した。そのプログラムの中では明晰夢のように自由に動き回ることができるので、別人の意識に乗りその身体を操ることで、テロによって起きた列車爆発事故までの8分間を何度も繰返し体験しながら、その原因を突き止めるのがミッションである。
ミッションを遂行するだけでなく、過去に干渉できるというのはつまりどういうことか、というところまで描いている。もし時間を遡れたら。もし過去を変えることが出来たら。事が起きてしまったままの過去と改変した過去とではそれから先の出来事が異なることになる。
SFというのは子どもっぽい空想が面白おかしいだけでなく、普通では想定できないような極限の状況を作り出す舞台装置にもなりうる。そのなかで人がどう感じてどう動くのか。人とは何か。自分とは何か。優れたSFは人間性の根幹に関わる哲学的な命題を孕んでくるのである。そういう道具立ての妙を引き立てるのが、本当に上手なんだなぁ。