映画:アルゴ(監督:ベン・アフレック)


イランでのアメリカ大使館襲撃事件の裏話である。事件が起きたのは1979年。カーター大統領の頃だそうで、気がついたときには日本の首相は中曽根でアメリカのトップはレーガンだった私はこの事件があったことも覚えていない。イランではホメイニ師ら評議会が政権を奪取したイラン革命の頃である。
当時の様子を知らなかったので、銀幕に写る町並みやざわざわした人々のキナ臭い雰囲気を物珍しく見たのだが、これはそこにいるだけで怖かっただろうな。大きなスクリーンで観てこその臨場感かもしれない。それに当時の風物やディディールを作りこんで積み重ねてリアリティを出していて、こういうのはちょっとでも引っ掛かりがあると台無しになってしまいそうだし、作るほうは大変だろうな。しかしそれだけの緊張感が伝わってくる。映画なのでもちろん脚色はしてあるだろう。それでも事件性を含め当時の雰囲気の演出は素晴らしい。
映画で騙す話を映画で撮るというのも皮肉が利いていて面白かったな。虚飾に塗れたハリウッドというのも自虐たっぷりで、映画なんてもともとインチキなんだからインチキ映画だろうが手馴れたもんさ、という狸っぷりが可笑しい。
映画の中でも出てきたイーグルクロー作戦はこの救出劇のあと機体の故障で失敗してるんだよな。さらに大使館で人質になった人々は、反米活動の原因となった前国王が亡くなりカーターが退陣するまで1年以上も監禁され続けたのだった。
そういえば日本の大使館が襲撃された事件もあったなと調べてみたら、こっちは南米ペルー駐在の日本大使館だったね。(Wikipedia在ペルー日本大使公邸占拠事件)1996年だったので記憶に新しい。こっちはこっちで本当に地下トンネルを掘って救出したり、首相だった橋本さんが「あんパン総理」と揶揄されたりと、映画になりそうな題材ではある。