ナノイオンのドライヤー

年齢のせいか気候の変化のせいかはたまた両方か、ここ二、三年髪の毛がパサついて仕方なかった。もともと猫っ毛で少しうねる癖はあったのだが、だんだんそのうねりが激しくなってきているし、カラーを入れたのも毛先にいくほど透けてしまって頭髪全体では妙に不均一な色に見えていた。二十代の頃は脂っ気もあるし、ぞんざいに扱っていてもなんとなくまとまっていたのだが、そろそろちゃんとしたお手入れが必要になってきたようである。
ちょうど今まで使っていたドライヤーが壊れたので、ここはひとつ奮発してちょっといいヤツに買い換えようと思い立ったんである。結果的には誕生日にかこつけて買ってもらった。
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しかしこのナノイオンというのがよく判らない。
実際に使ってみると若干オゾン臭がして、なんとなく風が湿気を帯びているような気がする。それでいて髪はさらさらになりやすいし、短時間でまとまりやすい。色も心なしかいままでより毛先まで落ち着いて見えるような。なんとも不思議な使い心地である。
髪を乾かすのにわざわざ水分を補給するというのも矛盾してるように思えるが、まあアレだ、スチームアイロンも蒸気を当てながら乾かしてるわけだよな。実際の効果はそっちに近いのかもしれない。何故なら、綿や羊毛などの天然繊維はスチームを当てると癖が直って伸びるという性質があり、更にそれに熱と圧力を加えて癖付けすると布はピンと平らになるからである。人毛も天然の繊維なのだし、似たような性質を持っているとしても驚くにはあたらない。
ところでこの『熱と圧力を加えると布に癖付けできる』という原理も私にはよく判らない。何故そうなるのか説明しろといわれても出来ない。経験則で知っているだけである。テレビがどうして映るのか、なぜ音声と映像が同時に再生されるのかも、説明を聞いたことはあるものの感覚的にピンとこない。なんとなく概念は想像できるが、んじゃありあわせの材料で同じ原理の物を作ってみろといわれたら出来ないなぁ。私はどうも電気には弱いのだ。
つまりそれは私個人に限って言えば『判らないからといってその物理法則が存在しないとはいえない』ということでもある。
今回の買い物に当たって、実はいろいろ情報を集めたんである。だって電器屋に行って最安値のドライヤーとナノイオンのものの値段を比べると、リアルに一桁違うのだ。ここまで違うと本当に値段に見合うものなのか、確認したくなるのが人情というものである。
まず謳い文句にあるのが『ペルチェ素子で空気中の水分を集める』という箇所。ペルチェってナニ? というと、ある二種類の金属をつなげて電流を流すと、片方からもう片方へ熱が移動するという半導体の技術が出てくる(参考)。現象としては片側が熱くなり片側が冷たくなるということだ。
それがどうして水分を集めるということになるのかというと、水蒸気を含んだ空気を冷やすと結露が生じるという飽和水蒸気量についての原理を利用するわけだ。最近は除湿機でもそうした自然法則を利用した商品が出ている。何故そうなるのかというと、そういう性質だからとしかいいようがない。
その集めた水分に高圧電流を当てると、飛び散る際に分子レベルまで細かくなる(参考)らしいのだが、このへんまでくると私には真偽の判断がつかない。
いってることは工業技術で活水処理しているこの辺と似ているようにも思える。
しかしマイナスイオンというからにはこの水媒体が負に帯電しているのかというと、どうなんだろ。既にチンプンカンプンである。そもそも髪を含めた人体の表面は電荷が負になっている場合が多いと聞いたことがある気がする。だとしたらひっつきやすいのは正に帯電した物質なんじゃないのかなぁ。
ちなみに埃の類は正に帯電しているものが多く、空気清浄機などでマイナスに帯電するように処理された水分子を放出すれば空気中に漂っているプラスの塵埃と結びつき、重くなったそれらが床に落ちるという効果は、もしかしたらあるかもしれない。
しかしなぁ、こんな小さいドライヤーで家庭の電圧で、アレとコレとソレが実際可能なんだろうか。特許とってるみたいだけど、最先端の技術は調べてみてもやっぱりよく判らん。そしてその水分子が本当に髪にいいのかどうかもよく判らん。いやまあ、短期的な効果があるのは実体験で確認したわけだけど。
誰か高校物理をやってない文系脳の私にも判るように説明プリーズ!