- 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
- 発売日: 2009/01/28
- メディア: DVD
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山懐に抱かれ起伏に富んだ自然のなかで、牧歌的に明るくコミカルに描かれているが、内紛の哀しさを含んだ物語である。
停戦が終わり息子は待望の大きなサッカーチームに招聘された途端に、徴兵されて泣く泣く戦争へ行くことになる。それと同時期に落ち着きのない妻はミュージシャンと駆け落ちしてしまい、中年男のルカは一人暮らしになってしまう。そこからストーリーが転がり始める。
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争があったのは1992年から1995年。物語の背景はおそらく一時停戦から最後の戦闘に入った1995年のことだろう。5月から10月までのひと夏である。ボスニア・ヘルツェゴビナの独立を求めるボシュニャク人・クロアチア人と、独立に反対するセルビア人との間の対立である。ルカはセルビア人、『ムスリム』と呼ばれているからサバーハはボシュニャク人なのだろう。紛争終結後、クロアチア人・ボシュニャク人がボスニア・ヘルツェゴビナ連邦、セルビア人がスルプスカ共和国を形成し、それぞれ独立性を持つ国家体制となった。さらにこの二つの国を国家連合として、国際的には一国と数えられることになったのである。
緑豊かな山岳地帯にジプシー音楽が鳴り響き、寓話を連ねたような物語がこれでもかと繰り広げられる。光溢れる画面は美しく満ち足りて、哀しみを呑み込んでいく。