映画:9〜9番目の奇妙な人形〜(監督:シェーン・アッカー)


ごちゃごちゃ説明するより、観たほうが早い。そういう視覚的な映画である。ティム・バートンに見出された新人クリエイターの短編を、長編に直したものらしい。個人的な好みの問題として、人形劇と聞いていかにもアーティスティックな感じの切り口の不ぞろいな布がぞろぞろした映像なのかと内心不安だったのだが、意外と硬派なつくりで面白かった。
手足の付いた麻袋のような人形が、何故か意識を持って目覚めるところから始まる。床には白衣を着た男の死体。ここはなんなのか。自分は何故ここにいるのか。外へ飛び出すと、焼けただれた無人の街が広がっている。彼は次々と自分と同じような仲間を見つけ、背中にそれぞれ番号が振られているのを発見する。そして自分の背中には『9』の文字。
なにが楽しかったかって、ジャンクなガラクタを拾って組み合わせ、工夫して原始的な道具を作っているところだった。手のひらサイズの人形たちなので、豆電球が頭ほどの大きさがあることになり、ペティナイフはゲームに出てくるような大鉈となる。美的センスよりも実用的な工学系のほうが好みの私にとって、そういう小道具があちこちに散りばめられ、動き回っているだけで「おっ」と目をひかれて見入ってしまった。『8番』だっけ、あの身体の大きな人形の暇潰し法も、なるほど〜とくすりと笑ってしまった。
スケール感が縮小されることで、世界は逆に大きくなる。ちょっとした側溝が千尋の谷となり、アスファルトの割れ目が巨大なクレバスとなり、猫ロボット(実写版)が巨大な怪獣となってしまう。見慣れた日常が一新される世界観が単純に面白い。
短編から長編へ引き伸ばしてある分、映像はそうした見ごたえがたっぷり詰まっているのだが、ストーリー的にはちょっと無理が出てしまった感があるのではないかと。魂の救済というのはキリスト教圏ではお約束なのだろうが、それまでの話の運びで違う展開を期待してしまったよ。
下は映画の元になったショートフィルム。こっちのほうも雰囲気が出ていて好きだな。